Archive for the ‘財産犯’ Category

口座を他人に譲渡することは犯罪です

2022-07-07

口座を売っただけで刑事事件に?

銀行口座のキャッシュカードや通帳などを販売した場合の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。

【ケース】
奈良県奈良市大森町在住のAは、奈良市内の会社に勤める会社員です。
Aは生活苦に陥り、借金(融資)をしたところ、その金が返済できず、次第に借金が膨れ上がるにつれて借金する会社の数も増えてきました。
そのうちの会社に、借金の取り立てが厳しい会社があり、「借金を返さなければ出るところに出ても良いんだぞ」等と脅しを受けていました。
怖くなったAは何でもするから勘弁してほしいと言ったところ、「なら銀行のキャッシュカード1枚につき10万円、借金から引いてやるよ」と言われました。
その後、Aはメガバンクや地方銀行など十数社に行き銀行口座を開設し、キャッシュカードと通帳を受け取りました。

Aは指示に従い1円も入っていないキャッシュカードと通帳をすべて郵送したところ、後日、そのうちの1つの銀行から「犯罪に使われたので取引停止した」という連絡が来たため、Aは奈良市大森町を管轄する大森警察署の警察官に相談したところ、あなたも被疑者になると言われました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

不正取得の銀行口座は何に使われる?

ケースのAはキャッシュカードと通帳を送付していますが、その口座は全て1円も入っていないというものです。
これを受け取った者は、どうするのでしょうか。

結論から申し上げると、このような形で第三者に渡ったキャッシュカードや通帳は、特殊詐欺やマネーロンダリングなどの事件に用いられます。
実際の事件で耳にする内容としては
・ワンクリック詐欺やオレオレ詐欺、ロマンス詐欺などにおいて、被害者に金を送金させるための口座として利用する
・特殊詐欺事件で受け取ったキャッシュカードの現金を繰り返し他の口座に送金することで攪乱させる
・犯罪などで受け取った金を、複数の口座を介することで出所を不明にしてマネーロンダリング(資金洗浄)を行う
などがあります。

口座を売買した場合の罪

銀行口座を他人に譲り渡す行為は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(通称、犯収法)に違反します。
条文は以下のとおりです。

犯収法28条1項 他人になりすまして…預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報…を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
同2項 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。(略)

口座を作る行為そのものが犯罪になる?

前章で、銀行口座のキャッシュカードや通帳を譲り渡した場合に問題となる犯収法違反について説明しました。
以前から持っていた銀行口座のキャッシュカードや通帳を譲り渡した場合には犯収法違反だけが問題となりますが、Aの場合は、新たに銀行口座を開設したうえでそのキャッシュカードや通帳を譲り受けています。
この場合、銀行口座を開設してキャッシュカードや通帳を受け取った行為自体が、詐欺罪にあたります。
詐欺罪の条文は以下のとおりです。

刑法246条1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

銀行等で口座を開設する際、銀行等側は本人が利用することを確認する義務があります。
その際、第三者に譲り渡す、売ることを言わずに口座を開設した場合、相手を騙してキャッシュカードや通帳(=財物)の交付を受けることになるため、詐欺罪が適用されます。

口座凍結・ローンが組めなくなる

銀行口座の新規開設は基本的に費用が掛からないため、軽い気持ちでキャッシュカードや通帳の交付を受けたり、既に持っているキャッシュカードや通帳を譲り渡したりする事案は少なくありません。
しかし、この行為が発覚した場合には、銀行口座の凍結はもちろんのこと、新規開設ができなくなったり、ローンが組めなくなるなどの不利益が生じます。
そして何より、特殊詐欺などに利用されることで、被害者に甚大な損失を与えることに繋がります。
このような行為は絶対にやめましょう。

 

奈良県奈良市大森町にて、融資等の目的でキャッシュカードや通帳を譲り渡したり、新規口座開設してしまったという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
在宅事件の場合、相談は無料です。

クラウドファンディングを悪用した詐欺未遂で逮捕

2022-01-25

クラウドファンディングを悪用した詐欺未遂で逮捕

クラウドファンディングを悪用した詐欺未遂で女性が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

クラウドファンディングを悪用した資金調達で逮捕

本年1月13日に報道された内容をまとめると、奈良県高田警察署に逮捕された女性は、昨年8月にすでに亡くなっている犬が、いまだ生存し闘病生活を送っているかのように装い、治療費名目の支援金を、クラウドファンディングを運営する会社のホームページを通じて募りました。
その結果、合計374人から合計184万円が運営会社のもとに集まったようです。
しかし運営会社から女性のもとに支援金が支払われる前に事件が発覚し、支援金は、運営会社から支援者に対して返金されていますが、もし今回の事件が発覚していなければ、支援された184万円から手数料を差し引いた約154万円が女性のもとに支払われる予定だったようです。
(1月13日の報道各社の記事を参考にしています。)

弁護士の見解

今回の事件を聞いた時、率直に、世の中に存在する人々の善意を悪用した非常に悪質な手口だと思いました。
クラウドファンディングは、自分の善意を世の中の困っている人たちに手軽に届けることができる非常にすばらしいシステムで、数年前に脚光を浴びてからは利用者が増えていると聞きます。
実際にクラウドファンディングを利用して助けられた方々も多く、今後も様々な分野で幅広く利用されることが予想されるので、クラウドファンディングを運営する会社では、さらなる管理システムを構築し、利用者が安心できるサービスを提供する必要があるでしょう。

詐欺未遂罪について

逮捕された女性の容疑は「詐欺未遂罪」です。
詐欺罪とは、他人から金品を騙し取ることで成立する犯罪です。
詐欺罪が成立するには

①相手を騙す(欺罔行為)
   ↓
②相手が騙される(錯誤)
   ↓
③相手に金品を交付させる

という最低でも3つの行為が必要となります。
そしてこの3つの行為が一つでも欠ける場合、詐欺罪は成立しませんが、詐欺未遂罪が成立してしまう可能性があります。
今回の事件は、運営会社から逮捕された女性にお金が支払われなかったので詐欺未遂罪にとどまったのでしょう。
詐欺未遂罪の法定刑は詐欺罪と同じく「10年以下の懲役」ですが、今回のような未遂事件の場合、実質的な金銭被害がないので、減軽される可能性が高いです。
とはいえ、人の善意につけこんだ悪質な犯行であることから、犯情が悪質と判断されるのは間違いないでしょう。

詐欺未遂罪で逮捕されたら

今回のような詐欺未遂事件で警察に逮捕されると、48時間以内の留置を経て、最長で20日まで勾留される可能性が考えられます。
勾留期間中は、警察署等の留置施設で身体拘束を受ける事となり、警察や検察官の取調べに応じなければいけません。
そしてこの勾留期間中に検察官が起訴するか、不起訴にするかを判断します。
不起訴になればその時点で刑事手続きが終了しますが、起訴された場合、その後の手続きは裁判所にうつされ、公開される刑事裁判で刑事処分が言い渡されます。
罰金刑の規定のない詐欺未遂罪で起訴されて刑事裁判になれば、無罪判決か執行猶予付きの得ない限りは刑務所に服役しなければいけません。

刑事手続きの流れについては
⇒こちら
で詳しく解説しています。


奈良県大和高田市の刑事事件に強い弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、奈良県大和高田市で起こった刑事事件に対応している法律事務所です。
ご家族、ご友人が警察に逮捕された方は

フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)

までお気軽にお問い合わせください。

キャッシュカードを送ると犯罪に?

2021-12-23

キャッシュカードを送ると犯罪に?

キャッシュカードを送った場合に問題となる罪とその後の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県生駒市在住のAは、生駒市内の会社に勤める会社員です。
AはSNSで「株で大儲けしたので、税金対策のためお金を配ります。」という投稿を目撃し、応募しました。
すると、投稿主からダイレクトメッセージが届き、残高がない金融機関のキャッシュカードとパスワードを送ってくれたら、入金をして返送すると説明を受けました。
Aは給与振込用の口座しか持っていなかったため、近くの金融機関に行って口座の新規開設を行い、数日後に自宅に届いたキャッシュカードを投稿主が指定した住所地に郵送しました。
数ヶ月経った後、Aが口座を開設した生駒市内の銀行から連絡が来て、キャッシュカードを他人に渡さなかったかと問われました。
Aは顛末を金融機関に伝えたところ、最寄りである生駒警察署に出頭するよう言われました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【キャッシュカードを送る行為は犯罪に?】

都市銀行・信託銀行・地方銀行・第二地方銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫といった各種金融機関に口座を開設した場合、通帳やキャッシュカードが交付・郵送されます。
口座開設の際、必ず身分証明書を確認され、他人に通帳やキャッシュカードを渡すことは固く禁じられています。
しかし、以下のような説明を受けるなどして、安易にキャッシュカードを郵送するという事案が見受けられます。
・闇金などに連絡したところ、融資を受けたい場合にはキャッシュカードを送るよう指示される。
・闇金などに金を借りたが返金できないという場合に、キャッシュカードを郵送するよう指示される。
・ブラックリストに載ってしまったので口座が開設できない。キャッシュカードを送ってくれたら謝礼を渡す。
・当選した人に金を配る等と言われ、キャッシュカードを送れば入金すると言われる。

しかし、このような行為は犯罪による収益の移転防止に関する法律(通称:犯収法)の定める下記条文に違反します。

犯収法28条1項 他人になりすまして…預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報…を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
同2項 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。(略)

【送付の目的で口座を開設したら詐欺罪に】

ケースについて見ると、Aは給与振込用の銀行口座1つしか持っていなかったため、新たに譲り渡すための銀行口座を開設しています。
しかし、先述のとおり、銀行口座は自ら利用することを前提としています。
他人に譲り渡す意思を隠して口座を開設したことで、キャッシュカードや通帳を受け取った場合、詐欺罪に問われます。
条文は以下のとおりで、「財物」はキャッシュカード・通帳となります。

刑法246条1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

【口座が凍結される】

ここまではキャッシュカードを送った、あるいは口座を開設した場合に問題となる罪について説明しました。
この章では、刑事事件とは別の手続きである口座の凍結について触れます。

先述のとおり、各々が送ったキャッシュカードは、特殊詐欺などで用いられる可能性が高いです。
具体的には、詐欺グループが被害者に対して「この口座に振込むように」と指示するなどして送金先として利用されたり、金の流れを分からなくするため被害者の口座からすぐに現金を引き出すのではなく、いくつもの銀行口座に送金を繰り返すなどして錯乱したりするための口座として利用されたりする可能性があります。

被害者からの相談等で特殊詐欺事件が発覚した場合、捜査機関は金融機関に通知します。
金融機関は、口座情報をもとに口座の名義人に連絡をして、確認作業を行います。
そこで口座名義人が不正に第三者にキャッシュカード等を渡した場合や連絡が取れなかった場合などについては、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律3条1項、及び同2項により、取引停止の措置を講じます。

また、金融機関が口座凍結を行った場合、預金保険機構に公告というかたちで情報が公開されるため、他の金融機関の口座についても凍結されたり、新規口座開設を拒否されたりする恐れがあります。
そうすると、給与の振込が出来なくなったり、ローンが組めなくなったりするなどの不利益が多く生じます。

奈良県生駒市にて、金融機関のキャッシュカードを送付してしまったことにより、銀行等から連絡が来て捜査機関から連絡が来たという場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に御相談ください。

ワンクリック詐欺で接見禁止一部解除

2021-11-25

ワンクリック詐欺で接見禁止一部解除

ワンクリック詐欺という罪についての解説と接見禁止一部解除について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県香芝市在住のAは,香芝市内の会社に勤める会社員です。
Aは多額の借金を抱えていたことから,手っ取り早く金を手に入れようと考えました。
そこで,自身のIT技術を活用し,アダルトサイトに似せたサイトを立ち上げ,「あなたは18歳以上ですか」というボタンをクリックした人に対して,「会員登録ありがとうございます。7日以内に振り込んでいただかなければ法的手段に訴えます。」とともに,受け手側のIPアドレスを表示し,振込先口座を併せて載せるサイトに飛ぶサイトを開設しました。
そして,実際にクリックしてしまった8人のうち5人が,それぞれ10万円をAの口座に送金しました。

送金後,被害者の1人が被害届を提出し,捜査機関が捜査を行った結果,Aによる犯行であることが分かりAは逮捕されました。
Aが逮捕されたという知らせを受けたAの家族は,Aに面会しようとしましたが,警察官からは「接見禁止がついているから面会できません」と説明されました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【ワンクリック詐欺について】

ワンクリック詐欺は架空請求と呼ばれる詐欺の手口の一種です。
架空請求詐欺には,法務省を謳ったハガキ・封筒を送りつけてきたり,ケースのようにアダルトサイトに登録したと見せかけて支払わなければ法的措置を講ずるといった脅しをかけてきたりといった手法で,ありもしない契約をあるかのように見せて,契約する意思がない人に金を振り込ませる手法の詐欺です。
最近では現金を振り込ませるのではなく,ウェブマネーカードに振り込みをさせたり通販サイトのギフト券等を購入させ送らせたりして,利益を得る場合もあります。

これらの行為は詐欺罪に当たります。
詐欺罪は刑法246条1項と同2項があり,条文は以下のとおりです。

刑法246条1項 人を欺いて財物を交付させた者は,十年以下の懲役に処する。
同2項 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。

【家族であっても面会できない―接見禁止】

被疑者が逮捕された場合,検察官は逮捕後72時間以内に被疑者を釈放するか,それ以降も身柄を拘束する勾留のための請求を行う必要があります。
その際,検察官は勾留請求と併せて接見禁止の請求を行うことができます。
接見禁止は,共犯者がいる事件などで下される決定で,裁判官が接見禁止決定を下した場合には弁護士を除き被疑者との面会が出来ないことになります。
これは,被疑者が面会に来た人に依頼して証拠の隠滅を図ったり口裏合わせをしたりする可能性などを危惧して行なわれます。
しかし,接見禁止決定が付いた場合にはご家族であっても面会が出来ないため,被疑者のみならず被疑者のご家族などにも精神的な負担をかけてしまいます。
そのため,接見禁止決定が付いた場合,弁護人は接見禁止の解除,あるいはご家族だけでも面会が出来るよう接見禁止一部解除を求める弁護活動を行う必要があります。
接見禁止一部解除を求めるためには,弁護士が裁判官や検察官に対して,ご家族の方が「犯罪にかかわっているわけではないため証拠隠しや口裏合わせができるわけでもなく,また,面会を行う必要がある」ということを主張する必要があります。
これは,刑事事件を専門とする弁護士の経験が生かされる場面です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は,詐欺罪などの刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
奈良県香芝市にて,ワンクリック詐欺などの刑事事件を起こしてしまい,接見禁止の一部解除のための弁護活動をお求めの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。

落とし物を着服したら弁護士へ

2021-11-04

落とし物を着服したら弁護士へ

落とし物を着服した場合に問題となる罪と、弁護士に依頼をするメリットについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県天理市在住のAは、天理市内の会社に勤める会社員です。
ある日、Aは仕事の休み時間に天理市内にある飲食店に行って食事をとりました。
その際、Aが座った席には前の利用者が忘れていった財布が落ちていて、中には現金5万円ほどがはいっていたことから、Aはその財布を着服してしまいました。
後日、天理市内を管轄する天理警察署の警察官がAの職場に来て、落とし物を着服した嫌疑で捜査を受けることになりました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【落とし物を着服した場合の罪】

落とし物を拾った場合、交番や警察署に届けるか、スーパーや飲食店、パチンコ店などの商業施設であればその店員に、届け出る必要があります。
たとえ出来心だったとしても、落とし物を着服する行為は犯罪に当たり、以下のような罪に当たります。

①遺失物横領罪・占有離脱物横領罪
公園や道路などで見つけた落し物を届け出ずに持ち去った場合には遺失物横領罪・占有離脱物横領罪が適用されます。
条文は以下のとおりです。

刑法254条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

ここで規定されているのは、占有離脱物横領罪であり、遺失物横領罪はその例示であるとされています。
持ち主がその場に忘れて行った物を盗った場合には遺失物横領罪が、意識して置いた上でその場を立ち去っていた場合などには占有離脱物横領罪の罪名が、それぞれ付くと考えられます。

②窃盗罪
上述のとおり、基本的には落し物を盗んだ場合には占有離脱物横領罪・遺失物横領罪が適用されますが、それを拾得した場所によっては窃盗罪が適用される可能性があります。
窃盗罪の条文は以下のとおりです。

刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

確かに、どのような場所であれ忘れ物である以上は占有を離れたものと言えそうです。
しかし、例えば商業施設やパチンコ店、ケースのような図書館などの場合、たとえ落し物であってもその占有は商業施設やパチンコ店、図書館などといった店舗の管理者にあると評価され、窃盗罪に処される場合があります。
なお、例え占有する商業施設やパチンコ店、図書館などの担当者が落し物についての認識がなかったとしても、占有は認められ窃盗罪が適用されます。

【弁護士に依頼するメリットは?】

前章で、落とし物を着服した場合の罪について説明しました。
このような比較的軽微ともとれる刑事事件では、加害者が被害者に対してお金を返せば終わると考える方がいるかもしれません。
しかし、弁護士に依頼をすることで得られるメリット、あるいは出来ないことが少なくありません。

・そもそも示談交渉ができない場合がある
示談交渉は当事者間の合意によるものですので、弁護士ではない一般の方でも執り行うことができます。
しかし、実際にはどのような書類を作成する必要があるのか、示談金はどれくらいの金額が妥当かといった専門的な知識が必要となるうえ、そもそも被害者が加害者に対して直接連絡先を教えたくない、という場合も少なくありません。
第三者である弁護士に依頼をすることで、過不足ない書面を作成し、円滑に示談交渉を進めることができます。

・取調べ対応
示談のいかんにかかわらず、刑事事件の捜査を受ける被疑者や関係者は、警察官や検察官の取調べを受けて供述調書を作成することになります。
捜査機関による被疑者への取調べの中では、時として厳しい口調になったり、被疑者自身の主張が供述調書に盛り込まれなかったりといった場合もあります。
取調べ前の打合せや、取調べでのトラブルなどに対応ができるという点も、弁護士に依頼するメリットの一つと言えます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
奈良県天理市にて、他人の落とし物を着服したことで窃盗罪や遺失物横領罪・占有離脱物横領罪などの罪に問われる可能性がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に御相談ください。

接見禁止~家族であっても面会できない?~

2021-08-30

接見禁止~家族であっても面会できない?~

特殊詐欺事件に加担してしまった場合の罪と、家族であっても面会ができなくなってしまう接見禁止という手続きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】

奈良県北葛城郡在住のAは、アルバイト生活を送っていました。
しかし、生活苦に陥っていたため高額バイトを探していたところ、SNS上で日当3万円と書かれている投稿を見つけて応募しました。
すると、指示役の者からダイレクトメッセージが届き、指定したチャットアプリをダウンロードするよう指示されました。
そして、指示に従って北葛城郡にある家を訪ね、住人から紙袋を受け取るという算段になっていたのですが、現場に着いたところ北葛城郡を管轄する西和警察署の警察官が張り込みしていて、Aは現行犯逮捕されました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【特殊詐欺事件について】

オレオレ詐欺、振り込め詐欺、お母さん助けて詐欺などと呼ばれている特殊詐欺事件は、認知件数については平成29年を、被害金額については平成26年を境に減少傾向にありますが、今なお多数の被害が生じています。
近年はSNSで「高額バイト」「闇バイト」などと称して募集をかけ、応募してきた者に対して「これまで逮捕された人はいない」「誰でもできる簡単な仕事」等の甘言で誘惑したり、「バレたら貴方が捕まるだけだ」等と脅すことにより、特殊詐欺に加担させるという手口が多いようです。

主犯格である指示役は、本名などを伝えず違法に入手した電子端末を使って連絡して指示を出します。
下記受け子や出し子が逮捕された場合には、その連絡先を断つなどして、自身は検挙のリスクを負わないようにします。
「架け子」は違法に入手した電子端末で被害者に連絡して金を準備させる役割であり、検挙されるリスクが低いという性質があり、指示役が掛け持ちしている場合があります。

一方で、Aのように自ら応募してきた者については、「受け子」・「出し子」などと呼ばれる仕事を任されます。
「受け子」とは、被害者の家に行って現金やキャッシュカードを受け取ったり、交換する等の手口で盗み取る役割を担います。
受け取った現金やキャッシュカードは駅などにあるコインロッカーに入れたり、郵送にて送るなどして、指示役や出し子とは直接接触することなく犯行が進められます。
ケースのように騙されたフリ作戦や事件後の捜査・職務質問等で検挙される可能性が高いという性質があります。

「出し子」は、受け子が取得したキャッシュカードを使ってATMで現金を引き出す役割を担っています。
受け子同様にコインロッカーや郵送により引き出した現金を渡す場合が多いです。
御案内のとおり、ATMには多くの防犯カメラが設置されていることから、出し子についても検挙される可能性が高い役割と言えます。
なお、受け子が引き続き出し子の役割を果たす場合もあります。

各役割を担った者は、その手段により詐欺罪や窃盗罪のほか、電子計算機使用詐欺などの罪に問われる場合があります。

【接見禁止とは】

被疑者が逮捕された場合、72時間以内に10日間(1度延長ができるため最大20日間)の身柄拘束が行われるか、釈放されることになります。
まず、逮捕後すぐの期間は、弁護士以外の方は原則として面会をすることができません。
一方で、勾留が付いた場合には、家族に限らず誰しもが面会をすることができます。
(但し、1日1度限り、時間は15分、警察官の立会あり等様々な制約があります。)
しかし、ケースのAが起こした特殊詐欺事件のように共犯者が複数人いるような事件の場合や薬物事件のように入手経路の特定を要するような事件については、勾留と併せて「接見禁止」の決定が付く場合があります。
接見禁止決定は、裁判官の裁量により行われます。
接見禁止が決定された場合、たとえ家族の方であっても面会することができません。

接見禁止決定を受けた被疑者と面会をしたいと考えた場合、接見禁止の全部を解除するよう求めるか、特定の者(家族など)の接見禁止のみ解除を求める必要があります。

接見禁止の解除・一部解除を申立てるためには、事件の詳細な情報を把握し、面会を求めている者が事件関係者ではないこと、面会による証拠隠滅の恐れがないことを的確に主張する必要があります。
奈良県北葛城郡にて、特殊詐欺事件に加担してしまい、勾留と併せて接見禁止の決定が付いた場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。
まずは刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が接見に行き、事件の内容を把握したうえで、接見禁止の解除が可能な事案かどうか、確認致します(初回接見は有料です。)。

特殊詐欺事件では面会ができない?

2021-08-09

特殊詐欺事件では面会ができない?

特殊詐欺と呼ばれる事件を起こした場合の罪と、弁護士以外の方の面会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県五條市在住のAは、五條市内に住む会社員です。
Aは昨今の情勢から収入が激減し、生活苦に陥りました。
そこで休みの日に金を稼ごうと考え、SNSで「裏バイト」と検索してダイレクトメッセージを送り、接触しました。
やり取りをした指示役からは五條市内の指定された個人宅に私服警察官を装って訪問し、キャッシュカードを受け取って帰るというものでした。
そのうえで、キャッシュカードを持って五條市内のATMに行って現金をすべて引き出し、その現金を指定された住所に郵送するという指示を受けました。

事件当日、Aは指示に従い五條市内の被害者宅を訪れましたが、特殊詐欺に気づき騙されたフリ作戦を敷いていた五条市内を管轄する五条警察署の警察官により逮捕されました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【特殊詐欺事件について】

ケースのAは、特殊詐欺事件で受け子と出し子と呼ばれる役割を担当していました。
受け子とは、被害者宅に行って現金やキャッシュカードなどを受け取る役割で、出し子とは、キャッシュカードで現金を引き出す役割です。
Aが失敗したキャッシュカードの受け子については、特殊詐欺の方法によって罪名が異なります。

「キャッシュカードが不正に使用されているので、回収する必要がある」などと噓をついてキャッシュカードを受け取る
⇒被害者を欺罔して財物の交付を受けていることから、詐欺罪(又はその未遂)が成立

「キャシュカードが不正に使用されているので、担当者が来るまでに使わないようにしてくれ」などと嘘をついてキャッシュカードを封筒などに入れ、被害者の注意を逸らして封筒をすり替え、キャッシュカードを盗る
⇒被害者を欺罔することなく隙をついてキャッシュカードを窃取しているため窃盗罪が成立

【一般の方の面会について】

まず、ここでいう一般の方とは弁護士及び捜査機関(警察官/検察官)以外の者を指します。
家族の方についても、一般の方の面会の対象になります。

一般の方の面会について、運用は都道府県などによって若干異なりますが、おおよそのルールは以下のとおりです。

・逮捕後ではなく勾留後から面会が可能
・平日の日中の時間帯のみ
・一般面会は1日に1回・1組限り
・1回の面会時間は最大15分
面会の人数は最大3名
・必ず警察官等の立ち合いがある

但し、勾留と併せて「接見等禁止決定」が下される場合があります。
接見等禁止決定は検察官が請求を行い、裁判官が事案を検討して職権でつけるという流れが一般的です。
接見等禁止決定が下された場合、事件関係者はもとより、(除外規定がある場合を除き)ご家族の方であっても面会をすることが許されず、手紙の差入もできません。

【弁護士については接見可能】

上記のルールはあくまで一般の方の面会についてであり、弁護士(弁護人又は弁護人となろうとする者)については逮捕後から、時間や回数の制限がなく接見(面会)をすることができます。
※検察庁や裁判所での接見については時間制限があります。

【家族が面会するためには?】

家族の方が面会を希望する場合、「接見禁止の一部解除」を求める必要があります。
これは裁判官の職権発動を促すもので、面会を求めている家族が事件には関わっておらず、勾留されている者の体調の心配や日常生活での確認事項などのために面会を求めているということをしっかりと主張する必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所は、特殊詐欺事件の弁護活動の経験が多数あります。
奈良県五條市にて、ご家族が特殊詐欺事件で逮捕され、勾留されてしまい、接見等禁止決定が付いてしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。
まずは弁護士に初回接見に行き、逮捕・勾留されている方からお話を伺ったうえで、接見禁止一部解除の可能性などについてご説明致します。(初回接見は有料です。)

個人間での融資は問題になる?

2021-08-05

個人間での融資は問題になる?

個人間で融資をして問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県香芝市在住のAは、香芝市内で小売店を経営しています。
Aは友人から「金に困っているから金を貸してくれないか」と言われました。
そこで、Aは友人に100万円を融資し、1年後に融資金の100万円と利息として100万円を支払うよう、言いました。
すると、その友人は実際にそれを履行しました。
それで味を占めたAは、知人やSNSで知り合った多数の者に金を貸し、中には100万円で1年後に利息として120万円を支払うように告げていた相手もいました。
ある日、香芝市を管轄する香芝警察署の警察官がAの自宅に来て、Aに対して「出資法違反、及び貸金業法違反で家宅捜索するから」と言い、令状を提示して家宅捜索を行いました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【融資をすることで問題となる罪】
融資とは、金を借りたいという人の申し出を受けて、金を貸すことを意味します。
本来であれば金の貸し借りは自由に行うことができる行為のはずですが、多重債務(金を借りたものの返しきれなくなり、別の金融業者に借りて更に借金が膨らむなどの状況)が社会問題となったことから、貸金業法という法律が作られ、平成22年に施行されています。
貸金業法では、貸金業者を届出制にするなどして、違法な融資を行う業者などを取り締まることができます。

融資を行う金融業を営む場合、事業所が一か所あるいは二か所以上ある場合は一つの都道府県に事業所を設置する場合には所在地の都道府県知事の、二か所以上の事業所を二つ以上の都道府県に設置する場合には内閣総理大臣の、登録を受けなければいけません。(貸金業法2条2項、同3条1項)

では、個人間での融資についてはどうでしょう。
例えば、融資などに携わっていないイチ個人が、友人や家族などに金を貸すことについて、すぐに違法となるわけではありません。(利息の問題は次章へ)
しかし、たとえ個人間であっても、「業として」貸金業を行う際には、登録が必要です。
「業として」行うというのは、それを商売として行うという意味では必ずしもなく、反復・継続して行うという意思があるかどうかによって判断されます。
Aについて見てみると、知人のほかSNSで知り合った知人に対しても融資を行っていることから、たとえ本職としてやっていたわけではないにしろ、業として融資をしていたと評価される可能性があります。

【融資の利息が問題となる罪】
更に、融資をする際に刑事事件に発展する場合として、利息の問題が生じます。
利息は、融資を受けた(お金を借りた)人が、融資した側(お金を貸した人)に対して支払う、融資金以上の上乗せ金額を意味します。
通常、サービス期間などの場合を除き、消費者金融から融資を受ける場合には、融資金に加えて利息を支払うことが通常です。
そして法律は、この利息について制限を設けています。

具体的には、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(通称:出資法)」で、利息が制限されていて、
個人間の融資 ⇒109.5%を超える利息は違法
融資業者の融資⇒20%を超える利息は違法

条文は以下のとおりです。

出資法5条1項 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント…を超える割合による利息…の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
2項 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

なお、この法律とは別に利息制限法という法律で利息の制限(融資金10万円未満は20%、10万円以上100万円未満は18%、100万円以上は15%)が設けられていて、利息制限法には違反するが出資法には違反しない、という状況に陥ります。
民法上、この場合には息制限法に違反した部分の利息は無効となり、支払う必要がないということになりますが、刑事事件にはなりません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、貸金業法違反や出資法違反などの刑事事件について取り扱っています。
奈良県香芝市にて、無登録での融資や高利息での融資により家宅捜索を受けた、取調べを受ける予定だ、という方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

万引き事件で早期の身柄解放

2021-06-17

万引き事件で早期の身柄解放

小売店などで商品を盗むいわゆる万引き事件と、逮捕された場合の早期の身柄解放活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ケース】
奈良県奈良市大森町在住のAは、奈良市大森町内の会社に勤める会社員です。
Aは職場近くにある奈良市大森町のコンビニエンスストアに毎日のように通い、商品は購入するものの、それ以外に決まった菓子を1点、万引きしていました。
コンビニエンスストアのオーナーVは、棚卸しで菓子が盗まれていることに気付き、マークしていたところ、Aによる犯行であるとわかりました。
そして、前日までと同様に万引きに着手したAが店を出たところでAに声掛けすると同時に警察に通報しました。
通報を受けて駆け付けた、奈良市大森町を管轄する奈良警察署の警察官は、Aを窃盗罪で逮捕しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【万引きについて】

万引きは、窃盗事件になります。
窃盗罪の条文は以下のとおりです。
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。

【万引きの立証は容易ではない?】

Aのように、万引きを常習的に行っているという事件は少なからず見られます。
一度被疑者を逮捕した場合、すべての万引き事件が立証できるのかというと、そうではありません。
万引きが行われる店は、不特定多数の客が出入りします。
そのため、たとえAが窃取した商品が毎日のように盗まれていたからといって、Aが犯人だと決めつけることができるわけではなく、Aが盗んだという確固たる証拠がなければ、逮捕・起訴することはできません。

【早期の身柄解放を求める弁護活動】

軽い気持ちで万引きをしてしまったという方もおられるようですが、上述のとおり窃盗事件になり、被疑者は逮捕・勾留されることも十分に考えられます。

逮捕は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足る相当な理由がある場合や現行犯人に対して行う場合などがあります。
その後、被疑者は72時間以内に勾留請求を行われるか、釈放をされることになります。
勾留に至るまでには、まず検察官が被疑者の弁解を聞いた上で身柄拘束をする必要があるのかどうかを検討します。
そして検察官は必要と判断した場合には裁判所に対して勾留請求を行います。
勾留請求を受けた裁判所の勾留裁判官は、勾留質問を行った上で、勾留が必要か否かを判断します。

弁護士は弁護士の立場から、身柄拘束が必要ないとして釈放を求める弁護活動を行います。
そのタイミングは、事件の内容や依頼を受けたタイミング、身元引受人の有無などによって異なります。
まず、検察官送致前や勾留請求前のタイミングであれば、検察官に対して逃亡の恐れがないことや証拠隠滅の恐れがないことを主張し、勾留請求をしないよう求めます。
次に、勾留請求された後であれば、裁判官に対して上記の主張を行い、勾留をしないよう求めます。
その後、勾留が認められた場合には、準抗告という形で勾留の取消しを求めるという方法がありますが、一度裁判官が認めた勾留の判断を(別の裁判官が判断するとはいえ)覆すことは容易ではありません。
よって、釈放を求める弁護活動を行う場合、逮捕後出来るだけ早く行うことが望ましいと言えるでしょう。

【早期釈放を求める場合は弁護士へ】

刑事事件は、事件の内容や被疑者の供述・態度により身柄拘束するか否か、身柄拘束された場合に釈放されるまでの期間はどれくらいか等、異なります。
捜査段階での身柄拘束について言うと、逮捕から2~3日程度で勾留がつき、(延長を含めて)勾留請求から最大20日の身柄拘束が認められます。
子育てをしている方や仕事をしている方にとっては、20日以上の身柄拘束は大きな負担と言わざるを得ないでしょう。

奈良県奈良市大森町にて、ご家族が万引き事件で逮捕された場合、身柄解放活動の経験が豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。

示談のつもりが恐喝に?

2021-05-10

示談のつもりが恐喝に?

刑事事件の被害者の立場で示談に応じたつもりが恐喝として捜査対象になってしまう場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県生駒市在住のAは、生駒市内の会社に勤める会社員です。
Aは職場内にて、上司であるXから陰部を揉みしだかれるなどの強制わいせつ罪に当たる可能性が高い事件の被害に遭いました。
そこでAはXに対し、「この件で、生駒警察署に行って被害届を出したら、Xさんはどうなりますかね?」「事件の現場はこの会社内ですから、警察が動くと実況見分調書や写真報告書を作るために警察の方が来られますよね。」と言いました。
XはAに対し「10万円払うので丸く収めてくれないか」と言ったところ、Aは「そんな安い金で受け入れられません。」と言い、最終的にAはXから現金100万円を受け取って終了しました。
後日、生駒市内を管轄する生駒警察署の警察官がAの自宅に来て、恐喝事件で被害届が出ていると説明し、Aを連行しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【強制わいせつについて】

まず、Aは強制わいせつの被害に遭っている可能性があります。
Xが、暴行や脅迫を用いてAの陰部に触れるなどわいせつな行為をしていた場合、強制わいせつ事件に発展します。
暴行又は脅迫というのは、目に見える暴行や言葉での脅迫行為は勿論のこと、上司と部下という地位に乗じてわいせつな行為をした場合や、相手の隙をついて(抵抗する間もなく突然に)わいせつな行為をした場合にも、強制わいせつ罪が適用されます。
強制わいせつ罪の条文は以下のとおりです。

刑法176条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

【示談のつもりが恐喝に?】

上記のとおり、ケースの事案の前半部分はXによる強制わいせつ事件で、Aが被害者の立場になる可能性があります。
被害者は、警察などの捜査機関に相談・被害届の提出・刑事告訴などを通じて事件の申告をすることもできますし、それをしないという選択肢もあります。
後者を選択する条件として、示談を行うということが考えられます。

示談とは、当事者間の合意により被疑者(加害者)の反省や制限などを書類に落とし込むものです。
示談の締結時に示談金を明記し支払う場合が多いですが、示談には示談金が必ず必要というわけではありません。

ケースの場合、Aが示談を受け取るという点については、民事上自然であると考えられます。
しかし、Aは示談金を支払わなければ警察に届け出ると言い、届け出た場合にはXの行為が社員に知られるなどと脅しととられる言葉で、暗に示談金を要求しています。
これは、脅迫罪に当たる可能性があります。
脅迫罪は、人を恐喝することで財物を交付させることで成立する罪で、恐喝とは「害悪の告知」であるとされています。
脅迫罪は、Aのように示談金額を具体的に提示していない場合でも、適用されます。
また、Aは警察に届け出る行為をちらつかせています。
前述のとおり、被害者が警察に届け出る行為は正当ですが、判例は「犯罪事実を官憲に申告すること」も害悪の告知にあたると示しています。

【まとめ】

強制わいせつ罪は、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をすることで、上司と部下の立場を利用してのわいせつ行為や相手の隙をついてのわいせつ行為も強制わいせつ罪の対象とされています。

強制わいせつ事件の被害に遭われた方は、示談などにより示談金を受け取ることが可能な場合がありますが、示談をして示談金を払わなければ警察に届け出るなどの発言は恐喝罪に発展する可能性があります。

奈良県生駒市にて強制わいせつ事件の被害に遭ったものの、それがきっかけで恐喝罪の被疑者になってしまった方おられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に御相談ください。

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