即決裁判手続

~即決裁判手続とは~

即決裁判手続は、単にすぐに決まる裁判のことをいうのではなく、法律が方式を定めた裁判手続の名称です。

即決裁判手続とは、事案が明白かつ軽微な事件について、裁判の開始から判決言渡しまでを原則として1日で行う手続きのことです。

 

~即決裁判手続の特徴~

一番の特徴は、即決裁判手続では、懲役又は禁錮の言渡しをする場合には刑の執行猶予の言渡しをしなければならないとされていることです(刑事訴訟法350条の29)。つまり、即決裁判手続が採られることになれば、有罪宣告後に直ちに刑務所に行くことはないということです。

また、起訴されてから実際に裁判が行われるまでの期間も原則として14日以内と決まっており(刑事訴訟規則222条の18)、裁判は判決の言渡しも含めて原則としてその日の内に終わります(刑事訴訟法350条の28)。

このように、裁判を短期間で終えるために、証拠調べ手続は簡略化されます。普通の裁判では、証拠調べ手続は、検察官の冒頭陳述・証拠調べの範囲や順序の決定・証拠調べの方法などは法律の規定に従って行われますが、そうした法律の定めが適用されなくなり、裁判所が適当と認める方法でできるようになります(刑事訴訟法350条の24)。

また、証拠について、検察官や弁護人・被告人が特に異議を述べない限りは伝聞法則が適用されなくなります(刑事訴訟法350条の27)。つまり、事件の目撃者などの供述を聴き取った警察・検察の調書や被告人の供述を聞き取った警察・検察の調書がそのまま証拠として採用され、それらの人を法廷で証人尋問したり被告人質問したりすることはなくなるということです。

このように、即決裁判手続には、宣告される刑が重くないという見通しが立ち、刑事裁判の手続から早く解放されるというメリットがあります。

一方、即決裁判手続では、事実誤認を理由として控訴することができません(刑事訴訟法403条の2第1項)。実際にはそんな事実はなかった、あるいは実際にはこんな事実があったという主張があっても、いったん即決裁判手続で判決が宣告されたら、もうそのことを上の裁判所で審理してもらうことはできなくなるということです。

即決裁判手続を採ることは、上のように、メリットもあればデメリットもあります。検察官が事件を即決裁判手続にしたいと申し出てきても、これらの点をよく考え、慎重に判断しましょう。

 

~手続の流れ~

即決裁判手続を採るためには、次の条件を満たすことが必要です。

  1.  死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件でないこと
  2.  事案が明白であり、かつ軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、即決裁判手続きによることが相当であること。
     
  3.  即決裁判手続きによることについて被疑者の同意があること。
     
  4.  被疑者に弁護人がある場合は,弁護人が即決裁判手続きによることについて同意をしているか、又は、少なくともその意見を留保していること。

上で「検察官が事件を即決裁判手続にしたいと申し出てきても」と述べたのは、3の条件を満たす必要があるからです。

検察官が1、2の条件に当たる事件について即決裁判手続の申立てをしたいと考えた場合、被疑者に、即決裁判手続について理解させるために必要な事項を説明し、通常の裁判を受けることができる旨を告げた上で、即決裁判手続によることについて同意するかどうかを尋ねてきます(刑事訴訟法350条の16第2項、3項)。同意するときは、その旨を書面で明らかにします(刑事訴訟法350条の16第3項)。口頭で回答しただけでは3の条件を満たしたことになりません。

4の条件は、即決裁判手続には上に述べたようにメリットもあればデメリットもあることから、法律の専門家である弁護士にそのチェックを求めるものです。同意すべきかどうか迷っているけれど、相談する弁護人がいないときは、国選弁護人を付けることを請求することもできます(刑事訴訟法350条の17)。

即決裁判手続によることに容疑者の同意を得られ、その弁護人が少なくとも反対していなければ、検察官は、裁判所に即決裁判手続の申立てをします。

即決裁判手続で裁判をするときに、被告人に弁護人が付いていないときは、裁判所が付けます(刑事訴訟法350条の18)。つまり、即決裁判手続の裁判では必ず弁護人が付くことになります。

即決裁判手続について不安や疑問がある方、即決裁判手続を希望される方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。即決裁判手続について説明をした上で、対応をアドバイスいたします。

 

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