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【事例紹介】特殊詐欺事件で詐欺罪、窃盗罪の容疑で逮捕された事例

2023-12-05

特殊詐欺事件を報じる新聞記事

だまし取ったキャッシュカードで現金を引き出したとされている特殊詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

共謀の上、キャッシュカードをだまし取ろうと考え、9月19日、市役所職員等と名乗って被害者の自宅に電話をかけ、還付金を受け取るためにはキャッシュカードを交換しなければならず、自宅を訪れる金融機関職員にキャッシュカードを渡してほしい旨うそを言い、その後、被害者の自宅を訪問してキャッシュカード2枚をだまし取った上、そのカードを使用して橿原市内のATMから現金合計100万円を引き出して盗んだとして、11月14日、男(24歳)を詐欺、窃盗で通常逮捕しました。
(11月22日 奈良県警察発表より引用)

特殊詐欺と詐欺罪、窃盗罪

今回の事例では、容疑者が共謀して被害者からキャッシュカードをだまし取り、キャッシュカードを使用して現金100万円をATMから引き出したとして、詐欺罪窃盗罪の容疑で逮捕されたようです。
今回の事例では、なぜ、詐欺罪窃盗罪の2つの罪で逮捕されているのでしょうか。

詐欺罪

まずは、詐欺罪について解説していきます。

刑法第246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

詐欺罪は簡単に説明すると、人にうそをつくことで相手に財物を渡すように仕向け、そのうそを信じた相手から財物を受け取ると成立する犯罪です。

今回の事例では、容疑者は共謀して被害者に市役所職員等を名乗る電話をかけ、キャッシュカードを交換する必要があるとうそをつき、被害者からキャッシュカード2枚を受け取ったとされています。
容疑者らが被害者に交換が必要だとうそをつかなければ、被害者はキャッシュカードを渡していないでしょうから、実際に容疑者らがキャッシュカードの交換が必要だと被害者に言ったのであれば、容疑者らは被害者にキャッシュカードを渡すように仕向けるためにうそをついて財物であるキャッシュカードを受け取ったといえるでしょう。
ですので、今回の事例では詐欺罪が成立する可能性があります。

窃盗罪

次に、窃盗罪について解説していきます。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は簡単に説明すると、人の財物をその人の許可なく盗ると成立する犯罪です。

今回の事例では、容疑者はだまし取ったキャッシュカードを使用して橿原市内のATMから現金合計100万円を引き出したとされています。
引き出されたとされている現金100万円は橿原市内のATMに保管されていたものですから、この現金の所有者はこの橿原市内のATMを管理する銀行になります。
ですので、キャッシュカードの本来の持ち主ではない人がATMで現金を引き出すと窃盗罪が成立することになります。
よって、今回の事例の容疑者らがだまし取ったキャッシュカードで現金100万円を引き出したのであれば、詐欺罪だけでなく、窃盗罪が成立する可能性があります。

特殊詐欺事件と弁護活動

特殊詐欺事件では、詐欺罪だけでなく、窃盗罪も成立するおそれがあります。
詐欺罪窃盗罪は有罪になると、懲役刑が科される可能性のある犯罪です。
また、詐欺罪に至っては、罰金刑の規定がありませんので、詐欺罪で有罪になると必ず懲役刑が科されることになります。
懲役刑が科されると刑務所に行くことになりますから、今までの生活をおくることはできなくなります。
実刑判決を回避するためには、不起訴処分執行猶予付き判決の獲得にむけた弁護活動が重要になります。

逮捕された場合、連日にわたって取調べが行われることになります。
取調べでは、容疑者から単に話を聞くだけでなく、供述調書が作成されます。
供述調書は裁判で証拠として扱われますし、検察官が起訴、不起訴の判断をするための判断材料にもなります。
ですので、不利な供述調書が作成された場合には、不起訴処分執行猶予付き判決の獲得が難しくなる可能性が高くなります。

不利な供述調書の作成を防ぐためにも、取調べ前に、供述すべき内容の整理を行っておく必要があります。
ですが、取調べではどのようなことを聞かれるのかわからない方や黙秘した方がいい内容と供述すべき内容がわからない方がほとんどだと思います。
弁護士に相談をして、取調べ前に対策を練っておくことで、後に不利な状況に陥ることを防げるかもしれません。

初犯では、実刑判決が下されないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、特殊詐欺事件では、初犯でも実刑判決が下されることが少なくありません。
ですので、実刑判決を避けるためにも、できる限り早い段階で弁護士に相談をし、不起訴処分執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動に着手することが重要になります。

実刑判決が下される可能性がある特殊詐欺事件では、不起訴処分の獲得を望めないように思われますが、被害者と示談を締結することで、不起訴処分を得られる可能性があります。
加害者が被害者と直接やり取りを行うことで、証拠隠滅を疑われたり、トラブルに発展するおそれがあります。
弁護士が加害者の代理人となって示談交渉を行うことで、円滑に示談を締結することができる場合がありますので、示談交渉は弁護士に委任することが望ましいといえます。

また、不起訴処分を得られなかった場合であっても、被害者との示談執行猶予付き判決に獲得や罪の減刑など、有利な事情にはたらく可能性は非常に高いです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
特殊詐欺事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

手術代が必要だとうそをつき、200万円をだまし取った事例

2023-11-28

犯罪行為でお金を得る男性

事例

Aさんは交際中のVさんとのデート中に、「健康診断で癌が見つかり、手術が必要だが手術費用が払えないため手術を受けられなくて悩んでいる」とVさんに吐露しました。
それを聞いたVさんはAさんの力になりたいと思い、現金200万円をAさんに渡しました。
その後、Vさんは、手術を受けるために病院に入院するというAさんからの連絡を最後に、Aさんとは連絡が取れなくなってしまいました。
Aさんの容体が気になっていたVさんは、何とかAさんの友人に連絡を取ることができ、Aさんの手術や経過についてその友人に尋ねました。
すると、Vさんはその友人から「Aさんが病気になったなんて話は聞いていないし、Aさんとは毎週のように会うけど、手術や入院なんて絶対にしてないし癌になったなんて嘘じゃないの?」と言われました。
なんと、癌になり手術費用が必要だというのは真っ赤な嘘で、VさんはAさんに騙されていたのです。
Vさんは最寄りの警察署である、奈良県長浜警察署被害届を出し、Aさんは詐欺罪の容疑で奈良県長浜警察署の警察官に逮捕されることになりました。
(事例はフィクションです。)

詐欺罪とは

詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させると成立します。
もう少し簡単に説明すると、人にうそをついて、うそを信じた相手にお金などの財物を渡させると詐欺罪が成立します。
また、財物を交付させるうえで重要ではない要素についてのうそや、相手がうそだと知っている状態で財物を交付した場合には、詐欺罪は成立しません。
ですので、詐欺罪が成立するためには、①相手に対して重大な嘘をつくこと、②その嘘を信じた相手に財物を交付させることの2点が必要です。

加えて、詐欺罪で有罪になると10年以下の懲役が科される可能性があります。(刑法第246条第1項)

今回の事例では、AさんがVさんに手術が必要だとうそをついて、200万円をVさんから受け取っています。
Vさんは手術をするのにお金が必要だと言われなければ200万円を渡さなかったでしょうから、Aさんのうそは財物を交付するうえで、重大なうそだといえるでしょう。
重大なうそをついて財物を交付させているといえますので、今回の事例では、詐欺罪が成立する可能性が高そうです。

では、Aさんが騙すつもりはなかったと詐欺罪の容疑を否認している場合にはどうでしょうか。

詐欺罪逮捕されたAさんは警察官からの取調べに対して、「手術が必要だとうそをついたのは本当だが、お金をほしいとは言っていない。お金を要求したわけではないのだから、詐欺罪にはあたらない。」と供述しています。
この場合、詐欺罪にはあたらないのでしょうか。

実際に事例をみてみると、AさんはVさんにお金がないから手術を受けられないと相談をしていますが、一言もお金が欲しいというような金銭の要求をしていません。
ですが、実際には手術の必要はない状態でお金が必要だとうそをつく行為は、そうすることでお金を得られると思ったからうそをついたのではないかと判断されても不思議ではありませんし、お金を得る目的でうそをついたのでなければ、200万円を渡されたときに受け取らないのが自然でしょう。
詐欺罪が成立するためには、財物を交付させる目的でうそをつく必要があります。
たとえ、自分から直接的にお金がほしいと言わなくても、お金を必要としていると思わせるようなうそをつくことで、うそによってお金を騙し取ろうとしていると判断できるような場合には詐欺罪が成立する可能性があります。

示談交渉の重要性

詐欺罪などの刑事事件では、示談交渉が非常に重要な役割を果たすことが多いです。
被害者との間で示談を締結することで、不起訴処分執行猶予付き判決を獲得できたり、科される量刑を少しでも減らすことができる可能性があります。

しかし、被害者の処罰感情が強い場合などには、加害者が直接示談交渉をすることはお勧めできません。
加害者が被害者に直接連絡を取ることで被害者をより怒らせてしまったり、そもそも連絡すら取れない場合も少なくありません。
ですので、示談交渉を行う際には、弁護士を介して行うことが望ましいでしょう。

また、当事者間で示談を締結する場合には、自分たちで示談書を作成することになります。
示談書の書式など、示談書にどういった内容を書けばいい のかわからない方がほとんどだと思います。
弁護士を入れて示談を締結する場合には、弁護士が代理人となって示談書を作成します。
そういった面でも、示談を行う場合には、弁護士を介して行うことが望ましいといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
詐欺罪示談締結でお困りの方は、詐欺事件などの刑事事件に精通した弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までご連絡ください。

ある朝、家族の突然の逮捕。どう対応したらいい?釈放に向けた弁護活動をご紹介します!

2023-11-21

逮捕される男性

刑事事件では、「ある朝突然、家に警察官がやってきて息子が逮捕された」なんてことも珍しくありません。
今回のコラムでは、逮捕された場合の事件の進み方や弁護活動についてご紹介します。

逮捕されたら

刑事事件では逮捕されると、72時間以内勾留の判断が行われます。
検察官が勾留請求を行わなかったり、裁判官が勾留請求を却下した場合には釈放され、家に帰ることができます。
一方で、勾留が決定してしまった場合には、さらに最長で20日間、身体拘束を受けることになります。

勾留が決まるまでの間や勾留の決定後は、当然、会社や学校には行けませんので、長期間にわたって会社や学校を休むことで、会社や学校に逮捕を知られてしまうおそれがあります。
逮捕を知られてしまうと、事件を起こしたことも知られてしまいますので、退学処分解雇処分につながるおそれがあります。

そういった事態を避けるためにはどうしたらいいのでしょうか。

上記のような事態を避けるためには弁護士に相談をすることが重要になります。
弁護士が身柄開放活動を行うことで、釈放を認められる場合があるからです。

釈放に向けて勾留前にできること

そもそもなぜ、事件を起こすと逮捕されたり、勾留されたりするのでしょうか。

逃亡証拠隠滅のおそれがあるからです。
実際に、検察官が勾留請求を判断する際や、裁判官が勾留の是非について判断する際には、逃亡の危険性があるか、証拠隠滅の可能性はあるかを考慮して判断します。

容疑者が逃亡したり、証拠隠滅をする可能性が高いと勾留が付いてしまう可能性が非常に高くなります。
例えば、殺人罪などの重い刑罰が予想される犯罪では刑罰から逃れるために逃亡するのではないかと判断されやすいですし、ひき逃げなどの場合には犯罪の性質上、一度逃げ出しているわけですから、逃亡の可能性が高いと判断されるおそれがあります。

また、証拠隠滅と聞くと、凶器や手袋などの物的証拠を隠したり破棄するイメージを持たれる方も多いと思います。
実は、容疑者や被害者、目撃者などの供述も証拠となります。
ですので、不利な供述をしないように迫る行為や、有利になるように供述内容を変更するように働きかける行為も証拠隠滅にあたります。
共犯者がいるような事件では、口裏を合わせる可能性があるとして証拠隠滅の観点から勾留が決定してしまうおそれがありますし、容疑者と被害者が知り合いであったり同じ家に住んでいる場合には被害者との接触が容易であるとして、勾留が付きやすいです。

上記のように、逃亡や証拠隠滅の可能性が高いと勾留されてしまうため、釈放を求めるうえでいかに逃亡証拠隠滅のおそれがないことを訴えるかが非常に重要になってきます。

弁護士は勾留が決定する前であれば、検察官や裁判官に勾留に対する意見書を提出することができます。
この意見書では、容疑者の家族が身元引受人になり容疑者を常に監視監督できることや、家族の監督により事件現場には絶対に近寄らせないこと、被害者や共犯者と接触させないことなど、逃亡証拠隠滅を行えない環境を整えていることを訴えます。
また、出勤や出席できないことで、会社や学校に事件のことが知られる可能性が高くこのままでは解雇退学のおそれがあることを書面にすることで、早期に釈放をしなければならない事情を訴えます。
意見書を提出することで、弁護士の訴えが認められ、勾留されずに釈放を認めてもらえるかもしれません。

この意見書は勾留が判断される前までにしか提出できないため、期限は最長で逮捕後72時間しかありません。
この72時間の間に、有利になる材料を集め、書面を作成しなければなりませんので、勾留前に釈放を目指すのであれば、できる限り早く弁護士に相談をする必要があります。

勾留決定後の釈放

では、勾留が決定してしまうと釈放は認められないのでしょうか。

結論から言うと、勾留決定後であっても釈放は認められます。

弁護士に相談をした時にはすでに勾留が決定してしまっていたり、弁護士が意見書を提出したものの釈放を認められず勾留が決定してしまった場合があると思います。
勾留が決定してしまった場合には、弁護士は裁判所に対して勾留決定に対する準抗告の申し立てを行えます。

この準抗告の申し立てについても重要となるのは、逃亡証拠隠滅のおそれがないかどうかです。
弁護士が裁判所に対して準抗告の申し立てを行うことで、勾留満期を待たず釈放してもらえる可能性があります。
この準抗告の申し立ては、勾留決定後、勾留の満期が訪れるまでの間であればいつでも申し立てを行えます。
ですので、勾留が決定した当日に申し立てを行い、弁護士の主張が認められれば、即日釈放してもらえる可能性もあります。

一度、勾留が決定しているのだから釈放は認められないんじゃないの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
勾留決定に対する準抗告の申し立てを行った場合、勾留を判断した裁判官とは別の裁判官が再度勾留について、判断することになります。
判断をする裁判官が変わりますので、弁護士の主張が認められずに勾留が決定してしまった場合であっても、勾留後に釈放を認めてもらえる可能性は十分にあります。

逮捕されたら弁護士に相談を

以上のように、逮捕された場合には、弁護士による身柄開放活動釈放が認められる可能性があります。
勾留前に釈放を目指す場合には、遅くとも逮捕後72時間までには、勾留に対する意見書を提出する必要があります。
また、この意見書を提出しない場合、釈放を求める機会が2回失われてしまうことになります。
貴重な機会を失わないためにも、暴力事件交通事件などで大切なご家族様が逮捕された場合には、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所では、初回接見サービスのご予約を24時間365日受け付けております。

子供へのしつけのつもりが暴行罪で逮捕⁈暴行で相手がけがをしてなくても逮捕されるの?

2023-11-14
家庭内暴力

暴行罪は、身体的な攻撃を伴う犯罪行為であり、日常生活の中で意外と身近な犯罪です。
今回のコラムでは虐待などの家庭内暴力の事例を交え、暴行罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

暴行罪の定義と基本要件

暴行罪は、刑法第208条で「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と規定されています。
暴行とは、有形力の行使をいいます。
例えば、殴る、蹴るなどの身体的な接触を伴う行為を指し、精神的な攻撃や脅迫は含まれません。

しかし、身体的な接触があればかならずしも暴行罪が成立するわけではありません。
暴行罪が成立するためには、暴行の故意が必要になります。
故意とは、相手に対して意図的にすることを意味します。
ですので、道を歩いているときに意図せず肩がぶつかってしまった場合には暴行罪は成立しませんし、故意に肩にぶつかった場合には暴行罪が成立する可能性があります。

肩をぶつける行為や腕をつかむ行為などの軽微な接触であっても、故意によるものであれば暴行罪が成立する可能性があります。
この点において、暴行罪は日常生活の中で起こり得る多くの状況に適用される可能性があるため、どのような行為で暴行罪が成立するのかを知っていることが重要になります。

家庭内暴力と暴行罪の関係

家庭内暴力は、家庭の中で起こる身体的な暴力行為や精神的な攻撃を指します。
このような暴力が暴行罪に該当するかどうかは、行為の内容とその程度によります。
家庭内での身体的な攻撃は、暴行罪における「暴行」と見なされることが多く、特に故意によるものであれば、刑法上の暴行罪として扱われる可能性が高いです。

しかし、精神的な攻撃や言葉の暴力は、直接的な身体的接触が伴わないため、暴行罪は成立しませんが、それらの行為により何らかの傷害が発生した場合には傷害罪が成立する可能性があります。
家庭内暴力であっても、暴行罪は成立しますので、注意が必要です。

子供へのしつけで顔を平手打ちした事例

奈良県生駒市に住むAさんは、中学生の娘Vさんの学校の成績で思い悩んでいました。
注意をしても勉強せず遊んでばかりいるVさんに業を煮やし、AさんはVさんの顔を平手打ちしました。
平手打ちをされたことで、以降Vさんは自主的に勉強をするようになりました。
平手打ちをすれば言うことを聞くようになると思ったAさんは、その後もしつけと称してVさんの顔を平手打ちするようになりました。
ある日、Vさんが学校の先生にAさんから平手打ちされていることを相談し、Aさんは奈良県生駒警察署の警察官に暴行罪の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

Aさんにとってはしつけであっても、平手打ちは暴行にあたりますので、Aさんが娘のVさんに平手打ちをする行為は暴行罪が成立する可能性が高いです。
また、平手打ち程度の暴行では事例のように逮捕されることはないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の事例のように、虐待家庭内暴力の場合、加害者が被害者と接触することが容易であることから、逮捕、勾留される可能性が非常に高いです。

暴行罪と傷害罪

暴行罪暴行を加えた結果、傷害に至らなかった場合に成立する犯罪です。
ですので、暴行を加え、相手にけがをさせた場合には、暴行罪よりも重い、傷害罪が成立することになります。
擦り傷であってもけがにあたりますので、殴って相手の頬を少し切ってしまった場合には、暴行罪ではなく傷害罪が成立することになります。

暴行罪の法定刑は二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料でしたが、傷害罪の法定刑は十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金であり、暴行罪に比べて傷害罪の方がはるかに重い刑罰が科されることになります。

逮捕と勾留

先ほど、虐待家庭内暴力では逮捕される可能性が高いと書きましたが、一度逮捕されると事件が終了するまで出られないのでしょうか。
逮捕された場合には、有罪、無罪が決定するまで身体拘束が続くと思っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、有罪、無罪が決まる前であっても、身体拘束が解かれる場合があります。

刑事事件では、逮捕されると、逮捕後72時間以内勾留の判断がなされます。
この際に、検察官と裁判官が勾留が必要だと考えれば、勾留されることになります。
弁護士はこの勾留が決定されるまでであれば、検察官や裁判官に意見書を提出することができます。
意見書を提出することで、勾留されずに釈放を認めてもらえるかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、暴行事件に強い法律事務所です。
暴行事件傷害事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

ひき逃げしてしまったらどうしたらいい?逮捕されるってほんと?

2023-11-07

今回のコラムでは、ひき逃げしたら逮捕されるのか、逮捕された場合はどうすればいいのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

ひき逃げの法的定義

交通事故後、現場から立ち去る行為は、一見単純な過失のように思われがちですが、法的には「ひき逃げ」と定義され、重大な犯罪行為となります。
道路交通法では、運転者が交通事故を起こした場合、直ちにその場で停止し、被害者の救護と警察への報告を義務付けています。
この義務を怠った場合、たとえ被害者に軽微な傷しかなかったとしても、運転者はひき逃げの容疑で逮捕される可能性があります。
「ひき逃げ」とは、事故の事実を隠蔽しようとする故意の行為であり、その刑事責任は厳しく、社会的な信用を大きく損なうことにもなりかねません。
したがって、どんなに小さな事故であっても、適切な手続きを踏むことが法律によって強く求められているのです。

事故発生時の義務

道路交通法第72条1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

交通事故が発生した際、運転者は直ちに車両を停止させ、事故の状況を確認する義務があります。
この義務は、道路交通法によって定められており、事故による被害者の救護(道路交通法第72条1項前段)と警察への報告(道路交通法第72条1項後段)が含まれます。
運転者がこれらの行動を怠ることは、法律に違反する行為となり、重大な法的責任を負うことになります。
特に、被害者が怪我をした場合、運転者は速やかに救急車を呼ぶなどの救護措置を取る必要があります。
また、事故の詳細を警察に報告し、必要な情報を提供することで、事故の正確な記録を残すことが求められます。
これらの行為は、事故後の責任を明確にし、適切な処理を促進するために不可欠です。
運転者がこれらの義務を履行することで、事故に対する適切な対応が可能となり、法的な問題を未然に防ぐことができます。

「大丈夫」と言われた場合のリスク

交通事故の際、被害者が「大丈夫」と述べたとしても、その言葉に安心してはなりません。
事故の衝撃で一時的に痛みを感じないこともあり、後から怪我の症状が現れることがあります。
また、被害者がその場での判断を誤り、後に法的措置を取ることを決める可能性もあります。
このような場合、運転者が警察への報告を怠ったことが、後にひき逃げとして刑事責任を問われる原因となることがあります。
実際に、事故後に被害者が怪我を訴え出た例は数多くあり、運転者が逮捕されるケースも少なくありません。
法律は、事故の大小に関わらず、運転者に対して事故報告の義務を課しており、これを怠ることは重大な違反行為とされています。
したがって、事故発生時には、被害者の言葉に関係なく、必ず警察に報告し、適切な手続きを踏むことが求められます。

ひき逃げの刑事責任

ひき逃げ事件における刑事責任は、その故意性により重く見られます。
事故を起こした後、救護措置を取らずに現場から逃走する行為は、単なる過失ではなく、故意による犯罪として扱われます。
もしも事故を起こし、救護をせずに立ち去ったのであれば、道路交通法違反が成立することになります。
事故を起こした運転者が被害者の救護をせずに立ち去った場合、被害者のけがが運転者の運転によるものである場合には、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(道路交通法第117条2項)が科される可能性があり、前科が付くことで、一生にわたって悪影響を受け続ける可能性があります。
さらに、ひき逃げ事件は社会的な非難を伴うため、運転者の社会的信用にも大きな打撃を与える可能性が高いです。
法律は、事故に適切に対応することを通じて、人命を守ることを最優先に考えています。
そのため、運転者は事故発生時には、直ちに救助と報告の義務を果たし、刑事責任を避けるためにも、法律を遵守することが不可欠です。

示談が成立した後の影響

事故を起こした際に逃げないことが第一にはなるのですが、事故により気が動転して逃げ出してしまうこともあるかもしれません。
ひき逃げをしてしまうと必ず有罪になるかというと、そうではありません。
被害者と示談を締結することで、不起訴処分を得られる可能性があります。

被害者の救護を行わずに事故現場を立ち去るひき逃げ事件では、事故を起こした加害者が反省をしていないと思われてしまう可能性があり、加害者本人と連絡を取りたくないと思われる被害者の方もいらっしゃいます。
そういった場合には、弁護士が間に入ることで示談交渉を円滑に進められる可能性があります。
弁護士が示談交渉を行うことで、示談を締結できる場合がありますので、ひき逃げをしてしまった際には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

未成年者が被害者の場合

未成年者が交通事故の被害者となった場合、示談の相手方は親権者になります。
事故の被害者が未成年である場合、未成年者は自身の判断で「大丈夫」と伝えることがあっても、その後、保護者が事故の重大性を認識し、法的措置を取ることが多いです。
このような状況では、運転者が初期の対応を誤ると、後にひき逃げの容疑で厳しい刑事責任を問われることになりかねません。
被害者が未成年にかかわらず、事故の後遺症が後から出てくる可能性もありますから、事故を起こしてしまった場合には即警察署に事故の報告をすることが重要です。

また、親と示談交渉をする場合は、わが子を思う気持ちから処罰感情が苛烈になる場合もあります。
そういった場合に、加害者本人が連絡を取ることで余計に刺激してしまうおそれもありますから、示談交渉は弁護士に依頼することが望ましいでしょう。

ひき逃げで逮捕は回避できる?

ひき逃げは被害者の救護や事故の報告を行わずに事件現場を立ち去るわけですから、逃亡のおそれが高いと判断されやすく、逮捕される可能性が高いです。
逮捕される可能性が高いとはいえ、ひき逃げをしたら必ずしも逮捕されるわけではありません。

警察署から連絡が来る前に、弁護士とともに自ら出頭することで、逮捕を避けられる場合があります。
弁護士とともに出頭するほかにも、監視監督が望めそうな人、例えばご両親などに身元引受人となってもらうことも逮捕を避けるうえで重要になります。

ひき逃げ事件で逮捕されたら

ひき逃げ事件で逮捕された場合、適切な法的対応が極めて重要になります。
逮捕され、勾留が決定してしまった場合、20日間勾留される可能性があります。
当然、その期間は会社に出勤することはできませんし、会社と連絡を取ることもできません。
長期間無断欠勤が続くことで、会社を解雇されてしまうおそれがありますし、すぐに解雇されなくても、連絡がつかないことで逮捕されたことが知られることにより、釈放後に解雇など何らかの処分が下される可能性があります。

弁護士は勾留が決定する前であれば、検察官や裁判官に意見書を提出することができます。
この意見書は勾留が決定する前、すなわち逮捕後72時間以内に提出をする必要があります。
この意見書により、勾留されずに釈放を認めてもらえる可能性があります。

また、勾留決定後でも、弁護士は裁判所に対して申し立てを行えます。
弁護士が裁判所に申し立てを行うことで、勾留満期を待たずに釈放してもらえる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
数々の事件で釈放を実現してきた弁護士に相談をすることで、早期釈放を実現できるかもしれません。
ひき逃げをしてしまった方はお気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

無断で傘を借りた場合に罪は成立するの? 窃盗罪と使用窃盗

2023-10-31

無断で傘を借りた場合に罪は成立するのかどうかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

郵便物を投函しようと奈良県大和高田市にあるポストに向かっていたAさんは、ポストに向かう途中に通り雨に降られてしまいました。
通り雨といえど雨脚は強くすぐに止みそうにはありませんし、ポストまではまだ5分ほど歩かなければなりません。
ふと周りを見渡したAさんは、店先に傘が傘立てに置かれていることに気づきました。
悪いことだとは思いつつもAさんは傘を拝借し、10分後、傘を元にあった場所に戻しました。
この場合、Aさんは何か罪に問われるのでしょうか。
(事例はフィクションです。)

窃盗罪と使用窃盗

成立する可能性がある罪として、窃盗罪が挙げられます。

窃盗罪は刑法第235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。

今回の事例では窃盗罪が成立するのでしょうか。

窃盗罪は財物を占有者の意思に反して、自分や第三者に占有を移転させると成立します。
もう少しわかりやすく説明すると、持ち主の意思に反して、持ち主が占有している物を自分や他の人へと占有を移すと窃盗罪が成立します。

占有とは何でしょう。

占有とは、財物の事実的な支配や管理を指します。
誰から見ても誰かの持ち物だとわかる状態であり、持ち主が自分のものだと認識している物には占有があるとみなされます。
店の傘立てに置かれていた傘はおそらく店の店主や従業員、お客さんの持ち物でしょう。
このように、誰から見ても持ち主がいることがわかる状態であり、持ち主が自分のものだと思っている物には占有があるとみなされます。

Aさんが傘を無断で借りてから返すまでの間の10分間は、Aさんが傘を使用していたわけですから、この10分間についてはAさんに占有が移っていたといえます。
そして、Aさんが傘を元の場所に戻した際に、傘の占有がAさんから元の持ち主の下に戻ったことになります。
一時的でも占有が移転したのであれば窃盗罪が成立しそうですが、窃盗罪は成立するのでしょうか。

結論から言うと、今回の事例では窃盗罪が成立しない可能性が高いといえます。
今回の事例では、Aさんは傘を拝借してから10分後に元の場所に戻しています。
傘の占有がAさんに移動したとはいえ、10分後には元の持ち主に占有が戻ったことになります。

占有
の移転が一時的である場合には、被害者の損害が軽微であるとして、窃盗罪ではなく使用窃盗にあたるとして不可罰としています。
例えば、封筒を開けるのに他人のカッターを使用して、すぐに元の場所に戻した場合、カッターの持ち主にはほとんど損害が発生しないでしょう。
このように損害が発生しないような場合や発生したとしても軽微である場合には、窃盗罪は成立せず、使用窃盗として扱われます。
使用窃盗不可罰ですので、懲役刑や罰金刑などの刑罰は科されません。

今回の事例でも、Aさんの下に傘の占有が移動していた時間は10分と短く、傘の所有者が被る損害はごくわずかでしょう。
ですので、今回の事例では窃盗罪ではなく使用窃盗にあたりそうです。

窃盗罪が疑わしい場合は弁護士に相談を

窃盗罪使用窃盗の境界線は明確に規定されているわけではなく、曖昧です。
ですので、物の使用時間や拝借を繰り返した回数によっては、使用窃盗にはあたらずに窃盗罪が成立してしまうおそれがあります。

逆に言えば、窃盗罪で捜査を受けていても、場合によっては使用窃盗にあたる可能性もあります。
弁護士が主張することで、使用窃盗だと判断してもらえる可能性がありますので、窃盗罪で捜査を受けている方は一度弁護士に相談をしてみることをお勧めします。

窃盗罪は有罪になると懲役刑が科される可能性のある罪です。
窃盗罪示談を締結することで不起訴処分を見込める場合があります
弁護士に相談をすることで示談を締結できる可能性がありますから、窃盗罪でお困りの方は弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談を行っています。
窃盗罪でお困りの方は、ぜひ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談のご予約は、0120―631―881までご連絡くださいませ。

腕時計の文字盤を塗りつぶしたら罪に問われるの?

2023-10-24

時計の文字盤を塗りつぶした際に問われる可能性がある罪として、器物損壊罪が挙げられます。
では、器物損壊罪とはどのような罪なのでしょうか。
今回のコラムでは、器物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

器物損壊罪とは?

器物損壊罪は、刑法第261条に基づく犯罪です。
簡単に言うと、他人の物を損壊した場合に器物損壊罪に問われます。

では、「損壊」とはどういった行為を指すのでしょうか?
「損壊」とは、物そのものの形を変更させたり滅失させる行為や、その物自体の効用を害する行為を指します。
例えば、食器を割る行為や、車のタイヤをパンクさせる行為も、この「損壊」に該当します。

親告罪とは?

器物損壊罪親告罪です。
親告罪とは、告訴がなければ起訴することができない犯罪を指します。
この特性により、被害者が告訴しない限り、起訴され刑罰を科されることはありません。

告訴が必要な理由

親告罪の存在理由は、被害者の意志に一定の尊重を与えるためです。
例えば、名誉毀損罪や侮辱罪なども親告罪に該当します。
被害者が示談を望む場合や、告訴を取り下げたい場合には、その意志が尊重されます。

時計の文字盤を塗りつぶしたら?

事例
奈良県大和郡山市に住むAさんは、上司のVさんに嫌がらせをする目的でVさんの腕時計の文字盤を油性ペンで塗りつぶしました。
Aさんが油性ペンで塗りつぶしたことを知ったVさんは、奈良県郡山警察署に被害届を出しました。
その後、Aさんは奈良県郡山警察署の刑事から話を聞かれることになりました。
(この事例はフィクションです。)

事例のAさんに罪は成立するのでしょうか。

結論から言うと、器物損壊罪が成立する可能性があります。

AさんはVさんの腕時計の文字盤を油性ペンで塗りつぶしています。
油性ペンのインクはなかなか落ちないでしょうし、時計の文字盤を塗りつぶされてしまうと、時間を見ることはできなくなります。
腕時計の効用は時間を把握することでしょうから、時間を見れないとなると時計としての効用を失ってしまったと考えられます。
「損壊」というと、床にたたきつけて壊したりなどを思い浮かべますが、物の効用を失わせる行為も含まれます。
ですので、事例のAさんが腕時計の文字盤を油性ペンで塗りつぶした行為は、「損壊」にあたるおそれがあり、器物損壊罪が成立する可能性があります。

「損壊」の範囲

先ほどの事例からわかるように、「損壊」の定義は非常に広く、物の形状を変えるだけでなく、その効用を害する行為も含まれます。
このような広い定義により、多くの行為が器物損壊罪に該当する可能性があります。
行為が「損壊」にあたるかどうかは、事例によって異なりますので、器物損壊罪の容疑をかけられた場合には、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

親告罪の刑事弁護活動

親告罪においては、被害者との示談がとても重要となります。
親告罪告訴がなければ起訴できないため、被害者との示談によって告訴を回避または取り下げてもらうことができれば刑事罰が科せられることはありません。

示談交渉は基本的に被害者本人とすることになります。
ですので、今回の事例では、Vさん相手に示談交渉を行うことになります。
AさんがVさんに示談を締結して告訴を取り下げてほしいと頼んだ場合、VさんはAさんの要望に応えるでしょうか。
おそらく示談を締結してもらえないでしょうし、告訴も取り下げてもらえないでしょう。
それどころか、余計にVさんを怒らせてしまうかもしれません。

そういった事態を避けるためにも、示談交渉を行う際には弁護士を入れることをお勧めします。
弁護士を入れることで話がこじれることを防げる場合がありますし、示談を締結できる可能性があります。

器物損壊罪でお困りの方は、刑事事件に強い、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談のご予約は、0120ー631ー88124時間365日受け付けております。

【事例紹介】家に押しかけ、ストーカー規制法違反で逮捕

2023-10-17

被害者の家族に対する恋愛感情などにより、被害者の家に押しかけたとして、ストーカー規制法違反逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

被害者の家族に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、10月6日夜から同月7日朝方までの間に、被害者の住居に押しかけ、つきまとい等を反復して行い、ストーカー行為をしたとして、10月8日、男(45歳)をストーカー行為等の規制等に関する法律違反で通常逮捕しました。
(10月12日 奈良県警察発表

ストーカー規制法

ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」といいます。)第2条1項では、恋愛感情などによる好意の感情やそれが満たされないことへの怨恨により以下の行為をすることを「つきまとい等」と規定しています。

①つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
②その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
③面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
④著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
⑤電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
⑥汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
⑦その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
⑧その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

ストーカー規制法では、住居等の平穏や行動の自由などが害される不安を覚えさせるような、つきまとい等を同一の者に反復して行うことをストーカー行為としています。(ストーカー規制法第2条4項)

ストーカー行為をしてストーカー規制法違反で有罪になった場合は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処されます。(ストーカー規制法第18条)
また、禁止命令に違反して、ストーカー行為つきまとい等をすることでストーカー規制法違反で有罪になった場合には、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処されます。(ストーカー規制法第19条1項、2項)

今回の事例では、被害者の家族に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、被害者の住居に押しかけ、つきまとい等を反復してストーカー行為をしたとされています。
恋愛感情などの好意の感情やそれによる怨恨で住居に押しかける行為は、つきまとい等に該当します。
反復してつきまとい等を行うことはストーカー行為に当てはまりますので、実際にストーカー規制法の対象となる好意やそれに対する怨恨などの感情で反復して住居に押しかけていたのであれば、ストーカー規制法違反が成立する可能性があります。

ストーカー規制法違反と釈放

ストーカー規制法違反事件では、容疑者が被害者に接触する危険性があることから釈放が認められづらい可能性があります。
また、今回の事例では住居に押しかけているわけですから、住居を知っていることから、被害者に接触するおそれが高いと判断される可能性が高く、釈放が認められづらくなるおそれが非常に高くなります。

弁護士が検察官や裁判官に釈放を求めることで、釈放を実現できる可能性があります。
ストーカー規制法違反事件では、生活圏や通勤経路が同じ場合が多いです。
ですので、事件が終息するまでの間は被害者に会わないように生活圏や通勤経路を変えることや、容疑者が被害者と接触したり逃亡しないように監視監督できる身元引受人がいることを弁護士がアピールすることで、釈放を認めてもらえる場合があります。

勾留逮捕後72時間以内に決定されますので、勾留前に釈放を目指す場合には、逮捕後72時間以内に書面等の提出を終えなければなりません。
書面等を準備する時間が必要になりますので、勾留される前に釈放を目指す場合は、逮捕後、早い段階で弁護士が釈放に向けた活動を行う必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、土日祝日即日対応可能な法律事務所です。
弁護士が釈放に向けた弁護活動を行うことで、早期釈放が実現できるかもしれません。
先ほど勾留前に釈放を目指す場合は逮捕後72時間以内に書面の提出が必要だと書きましたが、勾留が決定した後であっても釈放を求めることは可能です。
ただ、勾留が決定してしまった後だと、釈放を求める機会を2回失ってしまうことになります。
ですので、釈放を目指す場合には、できる限り早く、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】しつけを理由に幼い子供を窒息死させたケース②

2023-10-10

前回に引き続き、3歳の長男を布団で巻いて死亡させたとして、傷害致死罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

(前略)3歳の長男を布団で巻いて死なせたとして、傷害致死の疑いで、(中略)容疑者(27)を逮捕した。「泣きやまず、しつけのためだった」と容疑を認めている。
(中略)司法解剖の結果、死因は吐しゃ物を吸い込んだことによる窒息の可能性が高いとみられる。目立った外傷はなく、栄養状態にも異常は見られなかった。(中略)
捜査関係者によると、容疑者は「以前にも布団で巻いた」とも話していたという。(後略)
(9月28日 京都新聞 「3歳長男死なせた疑い、千葉」より引用)

弁護活動と罪の減軽

今回のケースのように、親による幼い子供に対する傷害致死事件の場合には、かなり重い刑罰が科される可能性があります。
実際に、3歳の子供を死亡させたとして傷害致死罪で実刑判決が下された事例をご紹介します。

(前略)交際相手の女性の長男(当時3)に高温のシャワーを浴びせ続けて殺害したとして、殺人などの罪に問われた(中略)の裁判員裁判の判決で、大阪地裁は14日、懲役10年(求刑懲役18年)を言い渡した。坂口裕俊裁判長は「死亡する危険性を認識していたとはいえない」と殺意を認めず、傷害致死罪にとどまると判断した。
判決によると、(中略)ちゃんの頭をクッションで3回殴って暴行。(中略)ちゃんに高温のシャワーを浴びせ続けて全身にやけどを負わせ、熱傷性ショックで死亡させた。
(中略)
量刑については、頭を殴る暴行など「虐待を繰り返す中で傷害致死の犯行に至っており、強い非難に値する」と指摘。「残酷で理不尽な犯行で、同種事案の中でも最も重い部類に位置づけられる」と述べた。
(後略)
(7月14日 朝日新聞デジタル 「3歳児に熱湯かけ続けた男に懲役10年 殺意認めず、傷害致死を適用」より引用)

上記の裁判では、3歳の子供を死亡させたとして、傷害致死罪で懲役10年の実刑判決が下されています。
今回の報道内容とは犯行内容などが少し異なりますが、どちらの事件も亡くなった被害者の年齢が3歳です。
今回の事例の報道によれば、容疑者は「以前にも布団で巻いた」と供述しているようです。
布団で子供を巻いた行為は虐待と捉えられる可能性があり、繰り返し虐待を行っていたと判断される可能性もあります。
今回の事例の報道内容が事実であり、しつけの範疇を超えた虐待であると判断をされれば、今回の事例も上記の裁判例と同様に「残酷で理不尽な犯行で、同種事案の中でも最も重い部類に位置づけられる」と判断される可能性があり、かなり重い罪が科されるかもしれません。

子どもへの傷害致死事件では、虐待の有無などによっても科される刑罰が変わってきます。
例えば、常日頃、虐待をしているような事例であれば、悪質であると判断されやすくなり、より重い刑罰が科される可能性が高くなります。

このように、子供への傷害致死事件では、できる限り科される量刑を少なくするために、経験豊富な弁護士による弁護活動が必要です。

例えば、取調べで作成される供述調書は裁判で重要な証拠となります。
ですので、意に反した供述調書が作成されてしまうと、裁判で不利な状況に陥る可能性が非常に高くなります。
そういった状況を避けるためには、取調べを受けるまでの間に、供述すべき内容を精査しておく必要があります。

とはいえ、初めての取調べで何もわからない不安な中、供述内容を整理することは不可能に近いと思います。
経験豊富な弁護士であれば、供述すべき内容かどうかを判断することができますので、取調べを受ける際や、取調べでご不安な方は、刑事事件に強い弁護士に相談をすることをお勧めします。

加えて、裁判では、証拠の収集が重要になってきます。
弁護士が収集した証拠によって、科される刑が軽くなる場合があるかもしれません。
また、傷害致死罪の容疑をかけられていても、弁護士が集めた証拠により故意性が否定され、傷害致死罪ではなく、過失致死罪などより刑罰が軽い罪が成立するかもしれません。
加えて、加害者による行為と被害者の死因の因果関係が認められない場合には、傷害致死罪は成立しません。
経験豊富な弁護士に相談をすることでより良い結果を得られる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害致死事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
関係者が逮捕勾留されている場合でも、最短当日に、弁護士が直接留置場や拘置所へ出張面会してアドバイスする初回接見サービスもご用意しています。
ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】しつけを理由に幼い子供を窒息死させたケース①

2023-10-03

3歳の長男を布団で巻いて死亡させたとして、傷害致死罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

(前略)3歳の長男を布団で巻いて死なせたとして、傷害致死の疑いで、(中略)容疑者(27)を逮捕した。「泣きやまず、しつけのためだった」と容疑を認めている。
(中略)司法解剖の結果、死因は吐しゃ物を吸い込んだことによる窒息の可能性が高いとみられる。目立った外傷はなく、栄養状態にも異常は見られなかった。(中略)
捜査関係者によると、容疑者は「以前にも布団で巻いた」とも話していたという。(後略)
(9月28日 京都新聞 「3歳長男死なせた疑い、千葉」より引用)

傷害致死罪とは

刑法205条によると、「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有機懲役に処する」として傷害致死罪を規定しています。

傷害致死罪は、①人の身体を傷害して傷害罪が成立した上で、②傷害よりも重い死亡という結果が生じた場合に、傷害罪よりも重く処罰する法律です。
① については、刑法205条「身体を傷害し」の文言が、②については同条「よって死亡させた」の文言が対応します。

今回のケースでは、容疑者は、しつけにかこつけて、幼い子供を布団で巻いて窒息させたとされていますが、傷害致死罪は成立するのでしょうか?

傷害致死罪が成立するためには、傷害罪の成立が必要になります。
そもそも傷害罪とはどういった犯罪なのでしょうか?

傷害罪(刑法204条)は、「人の身体を傷害」した場合に成立します。
傷害とは、人の生理機能を害することであるとされています(最判27年6月6日刑集6・6・745)
具体的には、殴られたことによる出血などのような外傷のほか、失神、慢性的な頭痛などを生じさせた場合に生理機能を害したとされます。
つまり、殴ったことでけがをさせた場合には傷害罪が成立しますし、頭を強く殴って失神させた場合や、騒音により慢性的な頭痛を引き起こさせた場合にも傷害罪が成立する可能性があります。

本ケースでは、長男を布団で巻いて死亡させたと報道されています。
司法解剖の結果によると、死因は吐しゃ物を吸い込んだことによる窒息の可能性が高いそうです。
容疑者が実際に長男を布団で巻いていて、かつ、窒息の原因が容疑者の行為によるものなのであれば、布団で巻くことで長男を窒息させたと言えますから、生理機能を害したとして、傷害罪が成立するでしょう。
加えて、上記行為が原因となって、死亡という結果が生じたのであれば、傷害致死罪が成立すると考えられますので、今回の事例の報道が事実であれば、傷害致死罪が成立する可能性があります。

逮捕されると、72時間の間に、勾留の判断が行われます。
勾留が決定した場合には、最長で20日間身体拘束を受けることになります。
傷害致死事件などの人が亡くなっている事件では、量刑が重くなることが予想されますので、逃亡のおそれがあると判断されやすく、釈放が認められづらい傾向にあります。

ですが、傷害致死事件を起こした場合には必ずしも釈放が認められないというわけではありません。
弁護士が勾留の判断が行われるまでの間に、検察官や裁判官に意見書を提出することで、釈放を認められる可能性があります。
この意見書逮捕後72時間以内に提出をする必要があります。
釈放に向けた弁護活動は時間との勝負になりますので、ご家族が逮捕された方は、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービスのご予約は、0120―631―881で受け付けております。

次回のコラムでは、傷害致死罪の容疑をかけられた際の弁護活動について、ご紹介します。

 

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