知らずに覚醒剤の密輸に加担?

知らずに覚醒剤の密輸に加担?

自分ではその気がないにもかかわらず,覚醒剤密輸に加担してしまった場合の罪と弁護活動について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県桜井市在住のAは,桜井市内の会社に勤める会社員です。
Aは格安の旅行会社のプランを用いて某国へ海外旅行に行きました。
旅行先では楽しい思いをし,予定どおり帰国のため空港に着いたところ,添乗員から「これはお土産です。家電製品が入っているので預け入れの荷物には入れられないため,機内持ち込みにてお持ち帰りください。」と言われました。
Aは指示に従って機内持ち込みし,帰国したところ,我が国の入国審査で別室に呼ばれ、法禁物が入っていた旨説明されました。
その後、税関職員と警察官が空港に来て、Aは「覚醒剤密輸した嫌疑」で逮捕されました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【覚醒剤の密輸で問題となる罪】

上記ケースはあくまでフィクションですが、このように旅行会社が薬物の売人と協力するなどして、知らぬ間に密輸に加担してしまうという事例は実在します。
とりわけ海外旅行では、渡された物を安易に持ち込まない、固より受け取らないという緊張感が必要と言えます。
では、このような事件に加担した場合にはどのような罪に問われるのでしょうか。
以下で検討します。

・関税法違反
関税法とは、我が国に輸出入される物に対して適切な税金をかけることを目的としていますが、それだけではなく、輸出・輸入してはいけないものを規定しています。
詳細は関税法第二款に規定されていますが、麻薬や大麻・覚醒剤といった薬物のほか、爆発物や拳銃の類、化学兵器の類、偽造通貨等、児童ポルノ等といったものが挙げられます。

今回、Aが我が国に持ち込んだ物は覚醒剤を想定していますので、以下の条文が問題となります。

関税法69条の11 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
1号 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤並びにあへん吸煙具。(略)

同法109条 第六十九条の十一第一項第一号から第六号までに掲げる貨物を輸入した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

・麻薬特例法違反
麻薬特例法は、正式名称を国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律と言います。
たとえば所持罪について、大麻であれば大麻取締法が、覚醒剤であれば覚醒剤取締法が、危険ドラッグであれば薬機法が、それぞれ適用されます。
では、麻薬特例法がどのような目的で制定されているかというと、違法薬物の入手経路や違法薬物の売買で得た収益などを対象に処罰規定を設けるべく、制定されている法律です。

麻薬特例法4条 税関長は、関税法第六十七条の規定による貨物の検査により、当該検査に係る貨物に規制薬物が隠匿されていることが判明した場合において、薬物犯罪の捜査に関し、当該規制薬物が外国に向けて送り出され、又は本邦に引き取られることが必要である旨の検察官又は司法警察職員からの要請があり、かつ、当該規制薬物の散逸を防止するための十分な監視体制が確保されていると認めるときは、当該要請に応ずるために次に掲げる措置をとることができる。(略)
1号 当該貨物について関税法第六十七条の規定により申告されたところに従って同条の許可を行うこと。
2号 その他当該要請に応ずるために必要な措置

同5条 次に掲げる行為を業とした者は、無期又は五年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。
4号 覚醒剤取締法第四十一条又は第四十一条の二の罪に当たる行為をすること。

同8条 薬物犯罪を犯す意思をもって、規制薬物として交付を受け、又は取得した薬物その他の物品を輸入し、又は輸出した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

・覚醒剤取締法違反
覚醒剤の輸入については、覚醒剤取締法にも禁止規定があります。
条文は以下のとおりです。

覚醒剤取締法41条 
1項 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第四十一条の五第一項第二号に該当する者を除く。)は、一年以上の有期懲役に処する。
2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。
3項 前二項の未遂罪は、罰する。

【ケースの場合の対応】

これまで見てきたとおり、覚醒剤を密輸するという行為は我が国の治安維持に極めて有害であり、行った場合には厳しい刑事罰を科されることになります。

しかし、今回のケースについてみると、Aは中身が覚醒剤であることを説明されずに搭乗手続きを経て帰国しています。
この場合、覚醒剤を密輸するという認識が欠如していることから、罪に当たらないことになります。
とはいえ、捜査機関としては「本当は認識があったのではないか」「格安のツアーだということで疑わしいと思っていたのではないか」等と厳しい取調べを受けることが予想されます。

奈良県桜井市にて、御家族が認識なく覚醒剤などの違法薬物の密輸に加担してしまい、関税法違反や麻薬特例法違反、覚醒剤取締法違反などの嫌疑で逮捕された場合、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に御連絡ください。
担当事務員がまずはどのような対応が適当か、御説明致します。

 

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