死亡した父親の遺体を自宅に放置 死体遺棄罪で逮捕

死亡した父親の遺体を自宅に放置したとして、死体遺棄罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件内容

今年2月下旬、父親の遺体をアパートの一室に放置したとして、このアパートで父親と同居していた息子が、奈良県郡山警察署逮捕されました。
3月6日、アパートを訪ねた親族が遺体を発見したことから事件が発覚していましたが、その後息子は行方不明になっていたようです。
死亡した父親の死因は凍死だったようで、逮捕された息子は「パチンコ店に行っている間に父親が死んでいた。他の家族に責められると思って誰にも報告しなかった」と容疑を認めているようです。
(この事件の記事は こちら 

死体遺棄罪

死体遺棄罪は刑法に規定されている法律で、条文は以下のとおりです。

刑法第190条(死体損壊等)
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。(刑法第190条を引用)

死体遺棄とは、死体遺棄とは死体を遺棄することです。
「死体」とは、死亡した人の身体をいいます。(人の形体を備えている以上、死胎をも含まれます。)
「遺棄」とは、通常の埋葬と認められない方法で死体等を放棄することをいいます。

※遺骨の遺棄も死体遺棄罪の罰則対象となりますが、「散骨」については厳密にいうと死体遺棄行為に該当する可能性もあるでしょうが、節度をもって行われる限り問題はないとされているのが一般的で、実際に散骨行為に死体遺棄罪が適用された例はないようです。

遺体を放置

死体遺棄罪でいうところの「遺棄」については上記のとおりですが、今回の事件のように遺体を発見しながら放置する行為も遺棄行為に該当するのでしょうか。
「遺棄」とは、通常であれば死体等を移動させることによる放棄、隠匿行為を意味しますが、埋葬の義務を有する者が死体を放置する事によっても、不真正不作為犯としての「遺棄」が成立するとされています。
よって今回の事件についても死体遺棄罪に抵触する事となります。

刑事処分は

刑事事件で被疑者(犯人)として警察で取調べを受けると、事件は検察庁に送致されます。そこで検察官が、被疑者(犯人)を起訴するか否かを決定するのですが、もし起訴されなかった場合は不起訴といい、刑事裁判は開かれません。
起訴された場合は、刑事裁判によって処分が決定しますが、罰金刑の場合は裁判が開かれない事もあります。(略式起訴)
日本の刑事裁判の有罪率は99パーセント以上と非常に高くなっていますが、これは「疑わしきは罰せず。」という刑事裁判における原則が、すでに裁判を提起(起訴)するか否かの時点で採用されている事が分かります。
つまり、裁判を提起(起訴)する検察官は、100パーセント有罪である、つまり被告人が絶対に犯人であるという確証がなければ、なかなか起訴しないという事です。
こうして起訴された場合に開かれる刑事裁判は、主に量刑が争点となる裁判がほとんどで、有罪無罪かを争う裁判は、刑事裁判全体の1割にも満たないと言われています。
量刑とは被告人に科せられる罰則の事で、その範囲は、法定刑で定められた範囲内で決定します。

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