脱税で検察官が逮捕?

脱税で検察官が逮捕?

脱税をした場合に問題となる罪と、警察官以外の公務員から逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県奈良市在住のAは、奈良市内の自宅で個人事業主として仕事をしています。
基本的にはAが仕事をして、配偶者であるXが経理を担当していました。
その際、Aは納税額を少しでも抑えようと考え、経費を架空計上することで経営利益を少なく見せていました。
ある日、奈良市内の自宅に検察官と検察事務官が来て、AとXは所得税法違反で通常逮捕されました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【税金について】

我が国では憲法29条各項で財産権が認められていて、その財産は侵されないことになっています。
しかし、その例外として、同じく憲法で、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と定められています。(憲法30条)
数としては46種類ほどの税金がありますが、代表的なものとしては
所得税・法人税・住民税・消費税・酒税・たばこ税
などが挙げられます。
上記の46種類は、国税と地方税に大別されます。
国税は全国一律で徴収される税金ですが、地方税(例えば、ゴルフ場利用税や入湯税など)は自治体の裁量で徴税することができることとされています。

【脱税について】

前述のとおり、日本には納税の義務があり、算定率に従って正しく税金を納める必要があります。
このうち、例えば消費課税(消費税や酒税、たばこ税、揮発油税など)については消費者が購入する段階で商品代金と一緒に支払っているため、消費者は適切な税金を支払っています。
しかし、所得税や法人税については、実際の収益に応じた算定率に基づいて納税をする必要があります。

「クロヨン」や「トーゴーサン」という言葉を御存じの方も多いでしょう。
会社員などの給与所得者は源泉徴収というかたちで税額が控除されるのに対し、自営業者や農林水産業従事者は捕捉率が低い(その収入や経費を税務署が追うことに限界がある)ことから、収入を少なく見せたり経費を多く見せたりするなどの方法により、脱税が行われる場合があります。

ケースの場合は、Aが経費の架空計上を行っていることから、下記の条文が問題となります。

所得税法238条1項 偽りその他不正の行為により、第百二十条第一項第三号(確定所得申告)に規定する所得税の額…若しくは第百七十二条第一項第一号若しくは第二項第一号…に規定する所得税の額につき所得税を免れ…た者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

【なぜ警察官以外が逮捕?】

逮捕には緊急逮捕、現行犯逮捕と通常逮捕があります。
このうち通常逮捕は、裁判所が発付する令状に基づいて行われる逮捕です。
逮捕状を請求できる人、逮捕状に基づいて逮捕を執行できる人は限られていて、どちらも警察官が行う場合が一般的です。
しかし、ケースの場合は検察官・検察事務官が逮捕のため自宅に来ています。
これはなぜでしょうか。

まず、脱税などの事件を取り扱うのは、主に国税局の国税専門官(国税調査官・国税査察官など)です。
脱税の場合、税務調査により申告漏れ等の調査をして修正を促す場合もありますが、金額が大きい場合や手口が悪質な場合には査察調査(犯則調査)を行い刑事裁判にかけることができます。
査察調査は国税査察官によって行われます。
査察調査には任意調査と強制調査があります。
任意調査では、帳簿などの必要書類を任意で提出させたり質問調査が行われます。
強制調査では、裁判所が予め発付した令状に基づく証拠物件の捜索・差押が行われます。

但し、国税専門官が行う調査は捜査とは異なります。
国税専門官は司法警察職員ではないため、正式な捜査を行うことはできません。
査察調査によって脱税などの嫌疑が濃厚になり、国税査察官が刑事事件化して刑事罰を科す必要があると判断した場合、検察官に事件を「告発」します。
告発を受けた担当検察官は捜査を行い、必要に応じて被疑者を逮捕します。

一連の流れで警察官は捜査に関与しません。
捜査を行うのは検察官であり、検察官や検察事務官には逮捕権が認められているため、ケースのような脱税事件の場合には検察官や検察事務官が逮捕するということになるのです。(刑事訴訟法199条1項)

脱税事件は、高額の場合など悪質性の高い事案については、ケースのように告発され検察官や検察事務官から逮捕される場合があります。
そして、金額次第では初犯であっても実刑判決を受ける恐れもある罪名です。
査察調査が始まっている方や、家族が突然脱税などの事件で逮捕され場合には、すぐに弁護士に依頼をすることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は奈良市内の刑事事件に対応している弁護士事務所です。
奈良市内で脱税などの刑事事件でお困りの場合、弊所フリーダイヤルに御連絡ください。

 

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