天理警察署に逮捕された、成年後見人による業務上横領事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
天理市に住む無職Aは90歳になる義母の成年後見人でした。
先日、義母が亡くなり遺品整理をしていた親族が義母の口座から長期間にわたって数千万円が引き出されていることに気付き、奈良県天理警察署に届け出ました。
そしてAは、業務上横領罪で、奈良県天理警察署に逮捕されました。
Aは、成年後見人による業務上横領事件に強い弁護士を選任しました。(フィクションです。)
成年後見人
成年後見人とは、認知症や、知的障害、精神障害などの理由で、財産の管理や、各種契約、遺産分割等が困難になった方々に代わって、法律行為を行う人の事です。
成年後見人は、家庭裁判所によって選ばれ、その活動は被後見人の利益、権利を保護、支援する事です。
成年後見人は、活動内容を家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所の監督を受けなければなりません。
業務上横領罪
業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を不法に横領する犯罪です。
業務とは、人の社会生活上の地位に基づいて反復、継続して行われる事務の事で、職業である必要はありません。
Aのような成年後見人は、被後見人の財産管理等を任されている立場にあるので、業務上横領罪の主体となります。
そして成年後見人であるAは、被後見人である母親の財産等を管理する立場にあるので、義理の親子関係にあっても、義母の財産を着服すれば、業務上横領罪が成立してしまうのです。
業務上横領罪には、10年以下の懲役が定められており、罰金の罰則規定がありません。
そのため起訴された場合、刑事裁判で無罪判決が言い渡されない限りは、執行猶予付きの判決か、刑務所に服役しなければならないのです。