傷害事件の正当防衛
傷害事件の正当防衛について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
奈良県生駒市に住むAは、彼女と一緒に歩いていた際に、通行人の一人とトラブルになり、通行人はAの彼女に殴りかかろうとしてきました。
それを見ていたAはこのままでは彼女が怪我をしてしまうと思い、彼女を守るために通行人を突き飛ばしました。
通行人は道に倒れてしまい、救急車で運ばれ、Aは傷害の疑いで奈良県生駒警察署に逮捕されることになりました。
正当防衛が主張できるのではないかと考えたAの彼女と両親は刑事事件に強い弁護士に初回接見を利用することにしました。
(この事例はフィクションです。)
正当防衛
傷害罪
第204条
「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
Aは殴りかかってきたVを突き飛ばして怪我をさせていることから、傷害罪となるように見えますが、この行為はVから彼女の身を守ために突き飛ばしていることから、正当防衛が成立してAに傷害罪が成立しない可能性があります。
正当防衛が成立するためには、
1.急迫不正の侵害が認められること
2.自己または他人の権利を防衛するためといえること
3.やむを得ずにした行為であること
上記の要件が満たされること必要です。
ここで「急迫」とは,判例によれば,法益侵害が現に存在しているか,または間近に押し迫っていることをいうとされています(最判昭46・11・16等参照)。
今回の事例で見てみると、VはAの彼女に殴りかかっているので、少なくとも彼女の身体の安全への不法な侵害が間近に押し迫っており、急迫性はあるといえそうです。
そして、「防衛するため」とは、急迫不正の侵害を認識し、これを避けようとする単純な心理状態をいうと解されています。
Aは彼女に対する侵害を避けようとする単純な心理状態が認められると考えられます。
さらに、自己または他人の権利を、とあるように侵害行為の対象は自己だけでなく、他人の権利であっても正当防衛が認められる可能性はあります。
また、「やむを得ずした行為」とは、正当防衛が正対不正の関係にあることから、防衛行為の相当性を言うと考えられています。
Aは殴りかかってきた相手を突き飛ばしたに過ぎないため、防衛行為の相当性があると言えそうです。
こうしたことから、Aに正当防衛が成立し、傷害罪は成立しない可能性があるといえるでしょう。
正当防衛でも逮捕される可能性
正当防衛で行った行為については、「罰しない」と刑法に規定されています。
この「罰しない」とは、刑事裁判の有罪判決を受けることはないという意味であり、判決に至るまでの逮捕や勾留などの身柄拘束やその他の刑事手続きについては、免れることができない場合があります。
つまり、正当防衛でした行為について、最終的に正当防衛が認められて不起訴処分や無罪判決になるような事例でも、逮捕や勾留等の身柄拘束を受ける可能性はありますし、仮に起訴された場合には刑事裁判を受けなければなりません。
刑事裁判の判決までは時間がかかり、警察での厳しい取調べが続くため、被疑者の心身に多大な負担がかかることが考えられます。
正当防衛を主張するためには、前述のように正当防衛の成立要件として「急迫不正の侵害」「自分または他人の権利の防衛」「やむを得ずにした行為」等の要件を満たす必要がありますので、正当防衛が認められる可能性があるかどうかについては、専門である弁護士の見解を聞くようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、正当防衛等の理由による傷害事件の刑事弁護もお受けしています。
弁護士が介入することにより、早期釈放や、不起訴処分を得ることもできるかもしれません。
奈良県生駒市の傷害事件やその正当防衛についてお困りの方は、まずは弊所フリーダイヤル0120―631―881へお電話ください。