車を貸して罪に問われる?
車を貸した場合に問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県大和郡山市在住のAは、大和郡山市内の会社に勤める会社員です。
ある日、Aは仲の良い後輩であるXから、「週末に彼女とドライブに行きたいので、Aさんの車を貸してもらえませんか」と言われ、二つ返事で承諾しました。
しかし、車を貸した当日、大和郡山市郡山警察署を管轄する郡山警察署から出頭するように連絡を受けました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【車を貸して罪に問われる?】
自動車を運転していた場合に刑事事件に発展する、というケースは暫し見られます。
人身事故を起こした場合は勿論のこと、飲酒運転や(一定速度以上の)スピード違反、無車検・無保険での違反等様々です。
これらのように、運転手の行為が刑事事件に発展することは容易に想像できるかと思いますが、自動車の持ち主が第三者に車を貸したことで問題となるケースもございます。
以下でそれを見ていきます。
・飲酒運転に関する場合
運転手が運転前に酒を飲んでいることを知っていた、あるいは運転した先で酒を飲んで代行運転などを頼まずに飲酒運転をして帰宅するつもりがあることを知っていたにも関わらず自動車を貸した場合、車両提供罪に該当します。
車両提供罪は、飲酒運転の幇助行為を処罰するための法律です。
まずは飲酒運転について説明します。
飲酒運転は、法律上は「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に区分されます。
飲酒運転が疑われる運転手に対し、警察官は呼気検査を行いますが、その結果が0.15mg/ℓ以上であれば、少なくとも酒気帯び運転にあたり、刑事処分の対象となります。
上記の結果に加え、運転手が警察官との応答ができているか(呂律が回っていない・会話が成立していないなどの事情があるかないか)や歩行検査(まっすぐに歩くことができているか)、上記検査の結果がどうだったかによっては、酒気帯び運転より重い酒酔い運転での処罰を受けることもあります。
酒酔い運転で処罰される者は多くが基準値である0.15mg/ℓを2倍、3倍以上上回るような場合が一般的ですが、体質により基準値未満の検査結果であっても酩酊しているような状態であれば、酒酔い運転に該当する可能性は否定できません。
本題に戻りましょう。
道路交通法65条2項では、「何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。」と定められています。
罰条は、運転手が酒気帯び運転をしていたか、酒酔い運転をしていたかにより異なります。
提供した車の運転手が酒気帯び運転だった場合⇒3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(道路交通法117条の2の2第4号)
提供した車の運転手が酒酔い運転だった場合⇒5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(同法117条の2第2号)
・無免許運転に関する場合
御案内のとおり、我が国では運転免許証を交付された者でなければ、自動車等を運転することはできません。
運転免許証を有していない者、運転免許証は有しているが取消・停止処分を受けた者が自動車等を運転した場合や、運転免許証は有しているが許可されていない車両を運転した場合には、無免許運転として刑事事件に発展します。
このような対象者であることが分かってい乍ら自動車等を貸した場合、これも車両提供罪に当たる可能性があります。
無免許運転の車両提供罪は、同法64条2項に「何人も、前項の規定(筆者注:「運転免許を受けないで」「自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。」)に違反して自動車又は原動機付自転車を運転することとなるおそれがある者に対し、自動車又は原動機付自転車を提供してはならない。」と定められています。
無免許運転での車両提供罪の罰条は
⇒3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。(同法117条の2の2第2号)
【貸した場合に必ず罪になるわけではない】
飲酒運転然り無免許運転然り、極めて危険な行為であることは間違いありません。
しかし、車両を提供した方の中には、「運転手が飲酒運転をするとは知らなかった」「貸した相手が無免許だとは知らなかった」という可能性もあります。
貸した側は運転手に対して、免許証を持っていることを確認したのか、あるいは持っていると誤認する理由(例えば以前は持っていたが最近になって累積による停止処分を受けた等)があったのか、運転前や途中で飲酒を伴う行動が想定されたか、等が重要になります。
捜査機関としてもこのような点は重要視しますので、取調べでの供述は慎重になるべきだと言えます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、ケースのように車を貸したものの運転手が飲酒運転だった、無免許運転だったという事例についても対応しています。
奈良県大和郡山市にて、友人などに車を貸したところ、その件で出頭を求められている等の方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に御相談ください。