ただのケンカで弁護士が必要?
いわゆるケンカが問題となる罪と、弁護士の必要性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県五條市在住のAは、五條市内の会社に勤める会社員です。
ある日、Aは酒を飲んでいる席で客Vから絡まれてしまい、口論に発展しました。
はじめの2分ほどは口論が続きましたが、そのうちAはVの胸倉を掴んでしまい、それを端緒にケンカに発展してしまいました。
AとVとは、店長が通報をして臨場した五條市を管轄する五条警察署の警察官によって任意同行を求められました。
その際、Aは暴行罪という罪名で取調べを受けましたが、後日警察官から連絡が来て、「Vは診断書を出して傷害罪での被害届が出されました。」と説明を受けました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【ケンカで問題となる罪】
いわゆるケンカが刑事事件に発展する場合について検討していきます。
●口論に発展した場合
まず、口論について、例えば「ふざけるな」「お前が悪いんだろう」などと言う内容については、基本的に罪に当たりません。
但し、「謝れ」「土下座しろ」などと、相手に義務のないことをさせた場合には強要罪が成立します。
また、「お前は昔からバカなんだよな」などと侮辱的な発言の場合は侮辱罪の成立が、「お前はそんな性格だから前科があるんだ」などの具体的事実を告げた場合には名誉毀損罪の成立が、それぞれ検討されます。
侮辱罪と名誉毀損罪は、どちらも公然性が要件になっているので、他の客が少ない、あるいはいなかった場合には成立しません。
(強要罪)
刑法223条1項 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害者た者は、三年以下の懲役に処する。
(名誉毀損罪)
刑法230条1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を棄損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
(侮辱罪)
刑法231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
●暴力行為に発展した場合
次に、暴力行為に発展した場合について検討します。
相手に対して暴力を振るう行為は、暴行罪や傷害罪にあたります。
相手を平手打ちする、殴るといったわかりやすい暴力行為はもちろんのこと、ケースのAのように相手の胸倉を掴む行為自体、暴行罪にあたります。
暴行罪と傷害罪の違いは、相手が怪我をしているか否かです。
相手に対して暴力を振るう意思をもって暴行罪に当たる行為をした結果、相手が怪我をした場合、傷害罪が成立します。
但し、ケンカなどではなく偶然に、あるいは事故で、相手に接触した場合には、暴行罪や傷害罪は成立しません(過失により相手を怪我させた場合には過失傷害罪が成立する可能性はあります。)。
更に、加害者が被害者に対して殺意を抱いていた場合には、殺人未遂罪が成立します。
殺人未遂罪は、相手を殺害しようとして暴行を加えた結果、被害者が死に至らなかった場合に成立する罪です。
殺人未遂罪で起訴するためには加害者の被害者に対する殺意を立証する必要がありますが、これは本人の供述のほか、態様(予め武器などを用意していた、相手が倒れたり流血した後も執拗に殴打した等)などの客観的な事情をも考慮したうえで判断されます。
(暴行罪)
刑法208条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(傷害罪)
刑法204条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(殺人罪・未遂犯処罰規定)
刑法199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
刑法203条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。
【ただのケンカと思わずに弁護士へ】
大小を問わず、些細な揉め事がケンカに発展したという話は少なからず聞いたことがあると思います。
当事者としては、ただのケンカだと楽観視している場合もあるようですが、ケンカの結果前科がつく・刑事罰が科せられることで、不利益が生じる方も少なくないでしょう。
単なるケンカだと楽観視せず、適切な対応・主張を行うため、まずは見通し等について弁護士に相談することをお勧めします。
奈良県五條市にて、些細な揉め事からケンカになり、暴行罪や傷害罪などの刑事事件に発展してしまった場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に御相談ください。