【解決事例】健康ランドの脱衣所で盗撮した教諭 罰金刑により失職
健康ランドの脱衣所で盗撮した教諭が、罰金刑により失職した事件の解決事例を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件の概要
公立中学校で教諭をしているAさんは、奈良市内の健康ランドの脱衣所において、小型カメラを使用して利用者を盗撮しました。
従業員に見つかって警察に通報されたAさんは、駆け付けた警察官によって警察署に連行されました。
すでに小型カメラを押収されていたAさんは、言い逃れすることができず最初から素直に犯行を認めていたので、逮捕されることはありませんでした。
しかし教諭であるAさんは公務員の身分も有しており、事件が教育委員会に発覚し失職することとなりました。
(実際に起こった事件を基に、一部変更を加えています。)
健康ランドの脱衣所で盗撮
公衆浴場の脱衣場で盗撮事件を起こした場合に適用される可能性のある犯罪は
①迷惑防止条例
②児童ポルノ製造罪
③建造物侵入罪
です。
迷惑防止条例違反
まず①の迷惑防止条例ですが、これは各都道府県で定められている条例で、都道府県によって条例名や、規制されている内容が異なります。
奈良県の場合は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という条例名で、盗撮行為を規制しており、Aさんの盗撮行為は第12条2項2号の「(中略)住居、浴場、更衣室、便所その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(中略)」に違反したことになります。
罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が規定されており、起訴されて有罪が確定すればこの範囲内の刑事罰が科せられます。
盗撮による児童ポルノ製造罪
公衆浴場の脱衣場は、不特定多数の人が利用する場所です。
もし盗撮した画像に18歳未満が映っていた場合、盗撮による児童ポルノ製造罪に抵触する可能があります。
盗撮による児童ポルノ製造罪の法定刑は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」と厳しいものです。
今回の事件では、Aさんの撮影した画像に、そういった児童ポルノに該当する映像が映っていなかったので、児童ポルノ製造罪は適用されませんでした。
建造物侵入罪
最後に③の建造物侵入罪についてですが、建造物侵入罪とは、正当な理由なく人の看守する建造物に不法侵入する犯罪で、刑法第130条に該当します。
盗撮事件に限らず、人の管理する建物内で犯罪を起こしてしまった場合、その犯罪行為だけでなく、建造物侵入罪でも追及を受ける可能性があるので注意が必要です。
ちなみに今回の事件でAさんは、建造物侵入罪については追及を受けませんでした。
罰金刑により失職
昨今、教職員による性的な犯罪が多発していることから、教育委員会は、性的な犯罪を起こしてしまった教職員に対して厳しい姿勢で対処しています。
実際に今年の4月1日からは、わいせつ教員対策新法が施行されており、今後は、盗撮のような性的な犯罪を起こしてしまうと失職する可能性がますます高くなることでしょう。