【事例紹介】奈良市内の住宅の勝手口ドアのガラスをたたき割り器物損壊罪で逮捕された事例

逮捕される男性

奈良市内の住宅の勝手口ドアのガラスをたたき割ったとして、器物損壊罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

1月4日夜、奈良市内において、一般住宅の勝手口ドアのガラスをたたき割ったとして、男(75歳)を器物損壊で現行犯逮捕しました。
(1月11日発表 奈良県警察WeeklyNewsより引用)

器物損壊罪

器物損壊罪は、刑法第261条で規定されています。

刑法第261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪は大まかに説明すると、公用文書や使用文書、建造物などを除いた他人の物を使えなくすると成立する犯罪です。

今回の事例では、奈良市内の住宅の勝手口ドアのガラスをたたき割ったとして男性が逮捕されたようです。
この勝手口ドアは住宅の所有者の物ですから、男性の住宅でない限り、他人の物にあたるといえます。
また、勝手口ドアのガラスがたたき割られれば、風が吹き込んでくるでしょうし、誰でも出入りできるような状態になっているかもしれません。
実際に男性が勝手口ドアのガラスをたたき割ったのであれば、ドアとして使えなくなっている可能性がありますから、男性に器物損壊罪が成立するおそれがあります。

建造物損壊罪

今回の事例では、奈良市内の住宅の勝手口ドアのガラスがたたき割られたとされています。
勝手口ドアは住宅の一部分といえるでしょうから、勝手口ドアのガラスがたたき割られたとすると、建造物が損壊したことにならないのでしょうか。

刑法第260条では、建造物損壊罪を規定しています。

刑法第260条
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する

簡単に説明すると、他人の建造物を使えなくした場合には、建造物損壊罪が成立します。

勝手口ドアのガラスがたたき割られたとされている奈良市内の住宅は、建造物にあたりますので、今回の事例では建造物損壊罪が成立しないのでしょうか。

建造物損壊罪は、建造物の骨格をなす柱や屋根など、容易に取り外しができないものを壊した場合や建造物の壁にラッカースプレーで落書きするなど景観を損ねた場合などに成立します。
窓などの取り外しが可能なものを壊した事例では、建造物損壊罪ではなく器物損壊罪が成立すると判断した判例が存在し、建造物損壊罪が成立するか否かは取り外しが可能であるかが分かれ目なようです。

今回の事例では住宅の勝手口ドアのガラスを割ったとされています。
この勝手口の取り外しが可能なのであれば器物損壊罪が、取り外しができない物であれば建造物損壊罪が成立する可能性があります。

ただ、適切な工具を用いれば取り外しが可能な居室の金属製ドアを金蔵バットでたたいてへこませた事例で、最高裁は適切な工具を用いれば取り外しが可能だとしても建造物損壊罪が成立すると判断しており(平成19年3月20日 最高裁判所 決定)、今回の事例の住宅の勝手口ドアが取り外し可能であっても建造物損壊罪が成立する可能性があります。

器物損壊罪と建造物損壊罪

器物損壊罪建造物損壊罪では、科される量刑がかなり異なります。

器物損壊罪の法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金でしたが、建造物損壊罪では5年以下の懲役であり、建造物損壊罪に罰金刑は規定されていません。
ですので、建造物損壊罪で有罪になった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り刑務所に行かなくてはいけなくなります。

繰り返しになりますが、住宅などの建造物の一部を壊した場合には、罰金刑の規定のない建造物損壊罪が成立するおそれがあります。
住居の勝手口ドアのガラスをたたき割ったとされている今回の事案のように、壊したものがドアであった場合には、紹介した判例にもあるとおり建造物損壊罪が成立する可能性があります。

器物損壊罪が成立するのか、建造物損壊罪が成立するのかは、事案によって異なりますので、他人の住居のドアなどを壊してしまった場合には、今後の見通しを把握するためにも、一度弁護士に相談をすることをおすすめします。

また、器物損壊罪建造物損壊罪のどちらが成立する事案であっても、弁護士による示談交渉処分交渉などの弁護活動によって、不起訴処分を獲得できるかもしれません。
ですので、器物損壊罪建造物損壊罪の嫌疑をかけられている場合には、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
刑事事件に精通した弁護士に相談をすることで、不起訴処分などより良い結果を得られるかもしれません。
器物損壊罪建造物損壊罪でお困りの方、ご不安な方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

 

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