【事例紹介】事実とは異なる内容の住民異動届を提出し逮捕された事例
事実とは異なる内容の住民異動届を提出したとして、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
(前略)奈良市役所において、同市役所職員に対し、事実と異なる内容虚偽の住民異動届を提出し、住民基本台帳にその旨不実の記録をさせ、同市役所に備え付けさせたとして、2月21日、男(57歳)を電磁的公正証書原本不実記録・同供用で通常逮捕しました。
(2月29日発表 奈良県警察WeeklyNews 「電磁的公正証書原本不実記録・同供用で男を逮捕《橿原署、組織犯罪対策課》」より引用)
事実とは異なる住民移動届の提出
住民異動届は引っ越しによって住所が変わった場合などに、提出をする必要があります。
今回の事例では事実とは異なる内容の住民移動届を提出したとされています。
事実とは異なる内容の書面を市役所に提出した場合には、罪に問われるのでしょうか。
刑法第157条1項
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第158条1項
第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
刑法第157条1項、158条1項では、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が規定されています。
事実とは異なる内容の住民異動届を市役所に提出した場合、この電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立する可能性があります。
電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪とは、簡単に説明すると、公務員に戸籍簿や住民基本台帳などのデータに事実とは異なる内容の情報を記録させて、その記録されたデータを閲覧可能な状態にさせることで成立します。
今回の事例では、容疑者が奈良市役所の職員に事実とは異なる内容の住民異動届を提出したことで、事実とは異なった内容が住民基本台帳に記録されたようです。
提出された住民異動届の内容は事実とは異なっているわけですから、住民異動届に沿って作成された住民基本台帳のデータについても事実とは異なった内容が記録されることになります。
奈良市役所の職員は公務員ですし、住民基本台帳の記録上に記録されると、記録されたデータは閲覧できるようになるでしょうから、実際に容疑者が事実とは異なった内容の住民異動届を提出したのであれば、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立する可能性があります。
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