~盗撮・のぞきの罪~
盗撮・のぞきは、何を、何処で、どのように盗撮したりのぞいたりしたかによって、別の法律でで処罰されたりします。
~性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(盗撮行為等処罰法)2条1項1号ロ~
「正当な理由がないのに」「ひそかに」「わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態」を「撮影する行為」をした者は「3年以下の拘禁刑(懲役)又は300万円以下の罰金」になります。
解説
例えばスカート内を盗撮したとしても、その盗撮画像がどのようなものかによって、法律違反となるのか条例違反となるのかが変わる可能性があります。
つまり、陰部を覆っている下着部分が撮影されている場合には盗撮行為等処罰法違反として、そうではない場合では迷惑防止条例違反として処罰されることになるでしょう。
盗撮行為については、これまで条例や軽犯罪法といった法令により処罰されてきましたが、令和5年に盗撮行為等処罰法が成立したため、今後はこの法律違反として厳しく処罰されていくことになります。
条例違反の場合と法律違反の場合での大きな違いは、法定刑の重さもありますが、条例違反であればどの都道府県において撮影されたのか分からない場合にはどの都道府県の条例を適用していいか分からないため罪に問われない可能性がありましたが、法律違反となる場合には都道府県関係なく処罰できるため、これまで見過ごされてきた場所が分からない盗撮画像が発見された場合でも処罰される可能性があるという点で注意が必要です。
~迷惑防止条例違反~
現在では、ほとんどの自治体で迷惑防止条例と呼ばれる条例があります。たとえば、奈良県では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名前の条例がこれに当たります。
奈良県の迷惑防止条例では、盗撮・のぞきについて次のように定めています。
1 構成要件該当性
(1)客観面
ア 身体や下着の盗撮・のぞき(奈良県迷惑防止条例12条1項2号)
- 人に対し
- 公共の場所又は公共の乗物において
- 人を著しく羞恥させ、又は人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で
- みだりに、着衣等の全部もしくは一部を付けないでいる他人の姿態若しくは着衣で覆われている人の下着若しくは胸部等の身体をのぞき見し、又は映像を記録する行為で卑猥なもの
②について、不特定又は多数人が自由に出入りする場所でなければなりません。たとえば、電車内はこれに当たります。
④について、たとえば、女性のスカートの下から下着などを盗撮したりのぞいたりする行為がこれに当たります。
イ 公共の場所等以外の場所からののぞき・盗撮(奈良県迷惑防止条例12条2項1号)
- 公共の場所及び公共の乗り物以外の場所から
- 写真機等を使用して、透視する方法により
- 公共の場所にいる他人若しくは公共の乗り物に乗っている他人の
- 下着若しくは胸部等の身体を見、又はその映像を記録すること
ウ 公衆が利用することができる浴場等での盗撮(奈良県迷惑防止条例12条2項2号)
- 住居、浴場、更衣室、便所その他人が着衣等の全部または一部を付けない状態でいるような場所にいる人に対し
- みだりに
- 人の姿態の映像を記録する行為
①で、人が衣服を着けていないような場所に限定されているので、③については、電車内での盗撮やのぞきのように,人の身体又は下着に対する盗撮やのぞきに限定されていません。たとえば、浴場などで、物陰にカメラなどを隠して盗撮したりする行為は奈良県迷惑防止条例12条2項2号違反行為に当たります。
(2)主観面
過失犯処罰規定はありません。性的意図がなくても成立します。
2 罰則
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(奈良県迷惑防止条例13条1項)。
常習として行った場合は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(奈良県迷惑防止条例13条5項)。
~軽犯罪法違反~
迷惑防止条例違反に当たらないような盗撮・のぞきでも,軽犯罪法違反に当たることがあり得ます。
1 構成要件該当性
(1)客観面(軽犯罪法1条23号)
- 正当な理由がなくて
- 人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所を
- ひそかにのぞき見る行為
②について、迷惑防止条例のような公共の場所である必要はありません。
③について、のぞきの中には,盗撮も含むとされています。
(2)主観面
過失犯処罰規定はありません。性的意図がなくても成立します。
2 罰則
拘留又は科料に処せられます(軽犯罪法1条柱書)。
3 他に成立する犯罪
軽犯罪法違反の盗撮・のぞき行為は公共の場所でなくても成立するので、たとえば盗撮・のぞき行為のために他人の家や敷地に入った場合には、軽犯罪法違反の他に、住居侵入罪が成立する可能性があります。
~卑猥な言動~
盗撮が立証されない場合でも、盗撮しようとした行為が立証されれば、迷惑防止条例における「卑わいな言動」として処分されることがあります(奈良県迷惑防止条例12条1項3号)。
また、ズボンを履いた女性の臀部をカメラで執拗に撮影した行為が「卑わいな言動」に当たるとされた例もあります。
~弁護活動の例~
1 無罪の主張
盗撮・のぞき行為を行っていないのに容疑をかけられてしまった場合は、嘘の自白をしないよう、取調べについての対応をアドバイス致します。
また、目撃者や客観的な証拠を探し出すことで、被害者の供述は信用できないことを主張していきます。
2 示談
実際に盗撮・のぞきをしてしまった場合でも、起訴前に示談をすることによって、不起訴処分により前科がつかなくなる場合があります。
また、示談をすることで釈放の可能性も高まり、早期の職場復帰、社会復帰を図ることもできます。
起訴前でも起訴後でも、被害弁償や示談の有無、被害者の処罰感情が処分に大きく影響するので、弁護士を介して示談をすることが重要です。
3 早期の身柄解放
盗撮・のぞき行為で逮捕されても、適切な取調べ対応と弁護活動によって早期の身柄解放も不可能ではありません。
逮捕後に勾留されないようにするためには、逮捕後の早い段階で弁護士と接見し、取調べ対応を協議したり、身元引受人の協力を得たり、反省の意思や二度と盗撮・のぞき行為をしない旨を主張したりします。
4 更生環境調整
必要であれば、矯正プログラムを検討したりして再犯防止のサポートをします。
性犯罪を起こした方は、自分の行為を恥じ、深い後悔をされている方がほとんどです。
しかし、そのような行為を止めたいと思いながら、自らをコントロールできずに、同種行為を繰り返してしまう方もいます。このような場合には、医療機関などの専門機関への受診と治療などを行い、根本からの改善を試みるように促します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件を中心に取り扱う事務所として,刑事事件の経験が豊富な弁護士・スタッフが在籍しておりますので,盗撮・のぞきについてのご相談がございましたら,弊所にご相談ください。