~裁判員裁判とは~
裁判員裁判とは,職業裁判官及び事件毎に一般の有権者の中から選任される裁判員によって構成される裁判体によって審理される裁判を言います。
~裁判員裁判対象事件~
裁判員裁判によって審理される事件は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「裁判員法」といいます。)第2条第1項に次のように定められています。
(1)死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件(裁判員法第2条第1項第1号)
(2)短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件(裁判員法第2条第1項第2号)
(1)は、殺人事件や強盗致死傷事件が典型的ですが、通貨偽造事件や営利目的での覚せい剤輸入事件なども罰則として無期懲役が定められているので、これに当たります。
(2)は、傷害致死、危険運転致死などがこれに当たります。
このように、裁判員裁判は、刑が重大だったり、故意の行為で人が死んだりなど、重大な事件が対象になります。
~裁判員裁判と通常の裁判の違い~
裁判員裁判であっても、通常の刑事裁判と裁判の根本が異なるわけではありません。つまり、
- 疑わしきは罰せず
- 立証責任は検察官にあり
- 事実の認定は証拠に基づく
という大原則は異なりません。
異なるのは、一般の有権者が裁判員として事実認定や量刑についての審理に加わることと、法律の専門家ではない裁判員にも充実した審理ができるようにするための措置が講じられていることです。
~公判前整理手続~
裁判員が充実した審理を行うために採られる措置の一つが、公判前整理手続(刑事訴訟法第316条の2以下)です。
公判前整理手続は、刑事裁判が開廷されるまでに数か月にわたって何回か行われるのが普通です。その中で、検察側、弁護側それぞれが、事件について何を主張するのかを明らかにし、証拠調べ請求をして、相手方に対してその証拠の開示を行います(刑事訴訟法第316条の14,刑事訴訟法第316条の18)。また、相手方が証拠調べ請求をしなか
った証拠でも、一定の重要性があると思われれば、相手方に対して手持ち証拠の開示を請求できます(刑事訴訟法第316条の15,刑事訴訟法第316条の20)。
こうした手続を経ることで、争点即ち判断の分かれ目になる事実は何なのかということと、その事実を立証する証拠として何が存在するのかが明らかになり、裁判において集中的に審理するポイントがわかります。
一方、争点と証拠の明確化という機能が骨抜きにされないために、公判前整理手続で提出しなかった証拠は原則として後から証拠調べ請求をすることはできません(刑事訴訟法第316条の32)。安易に考えていると自己の無実の強力な証拠が出せないということにもなりかねないので、注意が必要です。
また、上に述べたとおり、公判前整理手続は刑事裁判が開廷されるまでに数か月にわたって行われます。そのために、起訴後勾留されていると、公判前整理手続のために更に身柄拘束が長引くといったこともあります。
裁判が始まると,連日法廷が開かれて集中的な審理が行われ,一般的な事件であれば,1週間程度で判決が出されることになります。
~裁判員裁判における弁護人の役割~
裁判員裁判においては,通常の裁判以上に弁護士の果たす役割が重要になります。
1 公判前整理手続における弁護人の役割の重要性
公判前整理手続に付された事件では,弁護士に様々な証拠開示の制度が認められています。そのため,証拠開示の制度を上手く活用して,被告人に有利な証拠を検察官に開示させることが重要です。
また,検察官は,証明予定事実記載書面というものを提出し,公開の審理で何を証明する予定なのかということを明らかにしますが,そこに記載されている事実が不明確であり,そのままでは被告人にとって不利な認定をされてしまうおそれがある場合などには,それを明確にするように適切に求釈明します。
公判前整理手続は弁護人がいなければ開くことができませんが(刑事訴訟法第316条の4),それは,これらのような活動には法律に関する専門知識が必要不可欠だからです。
2 裁判員裁判における弁護士の役割の重要性
裁判員裁判で無罪判決や刑の減軽又は執行猶予付き判決を勝ち取るためには,通常の裁判と違い,一般人である裁判員を納得させる必要があります。
そのためには,通常の裁判と違い,裁判員にも分かりやすい言葉と証拠で,裁判員を説得する弁護技術が必要になります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を中心に取り扱う事務所として,刑事事件の経験が豊富な弁護士・スタッフが在籍しておりますので,裁判員裁判対象事件についてのご相談がございましたら,弊所にご相談ください。