虞犯事件
虞犯事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
奈良県桜井市に住むA子は高校に進学しましたが、クラスに馴染めず、すぐに退学してしまいました。
両親とも折り合いが悪くなってしまい、遂には家出してしまいました。
その後は援助交際をしたり、年齢を隠して風俗店で働いたりして、生活費や遊ぶためのお金を稼いでいました。
あるとき、繁華街を歩いていたところを奈良県桜井警察署の警察官に補導され、虞犯(ぐはん)として家庭裁判所に送致されました。
(この事例はフィクションです。)
虞犯(ぐはん)
虞犯少年とは、少年法第3条で審判に付すべき少年とされている中で第3項にある「次に掲げる事由があって、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞(おそれ)のある少年」のことを指します。
「次に掲げる事由」とは
・保護者の正当な監督に服しない性癖にあること
少年が保護者の監督を必要とする状態にあるにもかかわらず、法律上、社会通念上保護者の正当な監督に服しない行動傾向にある場合です。
・正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと
少年の性格、年齢、家庭の状況等を総合して、少年が家庭に戻らないことに正当な理由がない場合です。
単に家庭により付かないということでは虞犯とはならず、例えば、虐待やネグレクトからの逃走や、向学心や就職のために家庭を飛び出した場合は正当な理由があると判断されます。
・犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること
犯罪の契機や誘惑となるような交際や、教育上少年を立ち入らせるべきでない場所に出入りしている場合です。
例としては暴力団、暴走族などの反社会的集団に加入したり、不健全な風俗営業や遊興施設等に出入りしたりすることなどです。
・自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
性的悪癖や人格を損なうみだらな行為など、社会的・倫理的通念に反する行為を自ら行い、または他人にさせるような行動傾向がある場合をいいます。
今回の事例のように援助交際をしたり、風俗店で働いたりしているような場合です。
虞犯事件
虞犯事件は少年事件特有の事件であり、犯罪には至っていない、成人であれば処罰の対象とはならない行為であっても家庭裁判所の審判に付します。
どのような事実が虞犯事由に該当するかは、法分上必ずしも明確ではありません。
そのため、要保護性があるということのみで、手続きの対象とされてしまうことがあります。
保護者からの相談や警察官の巡回などで、虞犯少年を発見した後の流れについては、
・14歳未満の者⇒児童相談所に通告
・14歳以上18歳未満の者⇒家庭裁判所へ送致、通告若しくは児童相談所に通告
・18歳以上20歳未満の者⇒家庭裁判所に送致又は通告
上記のようになります。
児童相談所への通告後に家庭裁判所に送致されることもあり、送致後は少年審判を受けることになります。
他にも、犯罪少年や触法少年として捜査されていたが、嫌疑不十分となったため、虞犯で送致することもあります。
弁護活動
虞犯事件は実際に犯罪にあたる行為を行っているわけではないので、処分は軽く済むのではないかと思われがちですが、決して少年院などの収容施設への送致となる可能性が低いわけではありません。
虞犯事件は少年院などの施設送致や保護観察などの保護処分に付された比率は70%を超えており、少年事件全体での比率約37%と比べると高い比率となっています。(平成28年の司法統計)
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