※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。 当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。 |
1 風営法・風適法とは
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の略称です。
風営法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために風俗営業及び性風俗特殊営業等について、様々な規制を定めたり、風俗営業の健全化に資するためその業務の適正化を促進する等の処置を講じたりすることを目的としています。
2 罰則の種類
⑴ 無許可営業等
次のいずれかに該当すると、違反した個人は、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
この場合、法人などの業務に関して違反が行われた場合、その法人には3億円以下の罰金が科されます。
風営法でも最も重い罰則です。
2025年には罰則も強化されました。
- 風俗営業の無許可営業(風営法49条1号)
- 偽りその他不正の手段による許可等の取得(同2号)
- 名義貸しをして風俗営業をさせる(同3号)
- 営業停止などの処分への違反(同4号)
- 禁止区域で店舗型性風俗特殊営業などを営む(同5号、6号)
⑵ 承認のない営業所の変更等
次のいずれかに該当すると、違反した個人は1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、又はその両方が科されます。
法人も同じように罰金が科されることがあります。
- 承認を受けずに営業所の構造・設備を変更(51条1項1号)
- 偽りその他不正の手段による変更の承認を受けた場合(同2号)
- 18歳未満の者に接待行為をさせること(同4号)
- 18歳未満の者を客とすること(同4号)
- 20歳未満の者に対する酒類・たばこの提供(同4号) など
⑶ 客引きの禁止等
次のいずれかに該当すると、違反した個人は6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、又はその両方が科されます。
法人も同じように罰金が科されることがあります。
禁止の対象となる行為は、2025年の改正でも追加されました。
- 風俗営業に関して客引きをすること(53条1号)
- 客引きをするために、公共の場所で立ちふさがったり、つきまとったりすること(同)
- 接待飲食店営業(キャバクラ、ホストクラブなど)で料金の回収目的で威迫・困惑させること(同2号)
- 接待飲食店営業で、客に威迫・誘惑して、性風俗勤務やアダルトビデオへの出演などを要求すること(同2号)
- 性風俗営業を営む者がいわゆるスカウトバックを支払うこと(同7号) など
この他にも様々な罰則が定められています。
3 その他の規制
罰則(刑事罰)の対象でなくても、守らなければならないルールは他にもあります。
違反すると行政処分の対象となることもあります。
2025年には、接待飲食営業において、次の3点が新たな遵守事項として追加されました。
- 料金に関する虚偽の説明の禁止:
料金体系や請求額について事実と異なる説明をしたり、誤認させる説明をする行為。 - 客の恋愛感情等につけ込んだ勧誘の禁止:
客が接客従業者(ホスト・ホステス等)に抱く好意や恋愛感情を悪用し、「自分と恋人関係になれる」「一緒にいたいならもっとお金を使って」等と信じ込ませて巧みに高額な飲食をさせる行為。 - 客が注文していない飲食物等の提供禁止:
客が明確に注文の意思表示をしていないのに飲食やシャンパン等を提供し、後から料金を請求する行為。いわゆる勝手注文(無断で高額ボトルを開けて料金に加算する等)の手口。
また、風俗営業の許可は誰でも取得できるわけではなく、取得できない者(欠格事由)も定められていて、2025年にはその範囲が拡大されました。改正前から、暴力団員や禁錮刑受刑者、過去に許可取消処分を受けて5年経過していない者などは許可が下りない規定がありました。
改正法では新たに以下のケースが追加されています。
- (1)親会社等が許可取消処分を受けた法人:
申請法人の親会社その他密接な関係会社が、過去5年以内に風俗営業許可を取消されている場合、その申請法人には許可が下りません。
例えば、グループ内の別会社が悪質営業で許可取消となっているのに、社名を変えただけの新会社で営業再開といった看板掛け替えを防ぐ規定です。「親会社等」の範囲は国家公安委員会規則で定められますが、株式保有や役員の派遣等を通じて実質的に事業を支配している関係があれば該当すると考えられます。 - (2) 立入調査後に許可証を返納した者:
風俗営業所への警察の立入り調査を受けた後、その処分が確定する前に自主的に許可証を返上(返納)した者も、新たな許可申請ができない者に追加されました。
これは、いわゆる処分逃れを防止するための規定です。従来、重大な違反で取消処分が見込まれる事案で事業者が先に許可を返納すると、形式上「取消された」経歴が残らず、しばらくしてから再申請できる抜け穴が指摘されていました。改正法では警察による立入調査後~処分決定までの期間に許可を返納した場合も欠格事由にカウントされます。実質的に取消と同等とみなして5年間の申請禁止となるため、この手法は通用しなくなります。 - (3) 暴力的不法行為者に支配されている者:
申請者(営業者)の事業活動に関し、暴力的な不法行為等を行うおそれがある者が支配的な影響力を及ぼしている場合も許可不可となります。
これは、反社会的勢力が表面上関与していなくても、資金提供や取引を通じて裏で経営に影響力を持つケースを排除するものです。暴力団排除の趣旨を徹底する規定で、フロント企業や周辺者を使った関与も許さない内容と言えます。
以上の欠格事由拡大は、2025年11月28日以降の許可申請から適用されます。風俗営業の新規許可を検討する事業者は、自社および関連会社の過去の行政処分歴や、主要株主・出資者の背後関係を十分洗い直す必要があります。
特に(1)については、グループ内に取消歴がある場合5年間は新規参入ができない可能性があります。
また(2)について、今後は「摘発されたら一旦店を畳んで逃げる」という逃避策は許可再取得不能という重い代償を伴います。違反の疑いを指摘された際には、安易に返納や廃業で逃げようとせず、真摯に改善策を講じることが肝要です。
(3)については、例えば事業に資金提供している人物が反社的風評のある人物でないか、役員や実質的経営者が過去に暴力的違法行為を起こしていないか等、身辺整理を求められるでしょう。場合によっては出資関係の見直しや経営陣の交代も検討すべきです。
~風営法違反事件の弁護活動~
①不起訴処分の獲得を目指す
風営法違反事件で逮捕・勾留されてしまっても、不起訴処分となれば、身体拘束も解かれますし、前科も付きません。弁護士が不起訴処分につながるような様々な事情を検察官に伝え、交渉を行います。例えば、営業の適正化を行う、怠っていた手続きを速やかに行うといったことが考えられます
②身体解放活動
逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示したり、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身体解放を目指します。
③否認の場合の弁護活動
犯罪成立を争う否認事件では、独自に調べたり、意見書を作成したりするなどして不起訴や無罪判決に向けた弁護活動を行います。被疑者被告人に有利な証拠を基に、検察官や裁判官に不起訴処分又は無罪判決になるよう積極的に働きかけを行います。風営法の場合には、前任の経営者から引き継いだ場合で、許可申請や届出が適法に行われていたと認識していた、年齢確認した上で18歳未満とは知らずに接客させていたといった否認の場合が考えられます。
④できるだけ軽い処分を求めていく
風営法違反の事実に争いがない場合でも、起訴猶予による不起訴処分又は略式裁判による罰金処分になるように、正式裁判にならないように、検察官に対して、弁護活動を行います。
正式裁判になった場合は、裁判所に対して、減刑又は執行猶予付き判決を目指す弁護活動を行います。
具体的には、違反行為の態様、利益額、期間と回数、経緯や動機、前科・前歴などを慎重に検討して、酌むべき事情があれば主張していきます。風営法違反事件の再発防止のための具体的な取り組みや環境作りが出来ていることも主張していきます。
奈良県の風営法違反事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡ください。弊所では、奈良県内の様々な事件についても、刑事事件・少年事件に特化した弁護士による無料の法律相談を行っています。関係者が奈良県で逮捕勾留されている場合でも、最短当日に、弁護士が直接留置場や拘置所へ出張面会してアドバイスする初回接見サービスもご用意しています。