(1)刑の種類
刑罰の種類は,刑法に定められています。刑罰は、重い順に、
- 死刑
- 無期懲役
- 無期禁錮
- 有期懲役
- 有期禁錮
- 罰金
- 拘留
- 科料
となります。
また,これらの刑に付加される刑として、没収があります。
有期懲役は、1月以上20年以下の期間,刑事施設(刑務所)に拘置され、所定の作業(刑務作業)を課せられる刑罰です(刑法12条)。
禁錮は、刑務所に入りますが、刑務作業は課せられません。しかし、実態としては、刑務作業もせずに刑務所にいる方が苦痛だとして,禁錮刑を受けた場合も,希望して刑務作業をすることの方が多いようです。
拘留は,1日以上30日未満の間,刑務所に入れられるものです(刑法16条)。
罰金は、1万円以上の金額の納付が科せられるものです(刑法15条)。
科料は,1000円以上1万円未満の金額の納付が科せられるものです(刑法17条)。
これらの金額が完納できない場合は、労役場に留置されて、労務によって金銭の支払いに替えます(刑法18条1項,2項)。現在は、労務1日あたり5000円で換算されることが多いようです。
没収は、上のそれぞれの刑が科せられた場合、付加して科せられることがある刑です(ただし、拘留又は科料のみにしか当たらない軽微な罪については、原則として没収はできません)。
没収は、物の所有を取り上げてしまう刑です。取り上げられる物は次のような物です(刑法19条1項各号)。
- 犯罪組成物件(例 文書偽造罪での偽造文書)
- 犯罪供用物件(例 鶏を盗むのに当たり解体するために用意した刃物)
- 犯罪生成・取得・報酬物件(例 通貨偽造罪での偽造通貨・有償で譲り受けた盗品・買春業者に提供した建物の家賃)
- 対価物件(例 有償で譲り受けた盗品を転売して得た代金)
また、犯罪と無関係の人の物を没収することはできず、没収できるのは、その物件が犯人以外の者に属しない場合に限られます(第19条2項。一見しただけではわかりにくい表現ですが、犯人が所有する物及び誰も所有しない物、という意味です)。
組成,生成・取得・報酬,対価物件については、没収することができないときは、それに相当する価額を支払わせることができます(第19条の2)。
(2)犯罪の個数と刑の関係
いくつかの犯罪が行われた場合,それに対してどのように処分するか,刑法は,次のとおりに定めています。
ア 観念的競合(刑法54条1項前段)
1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合です。例えば,人身事故を起こしてそのまま逃げた場合,逃げるという行為は1個ですが,道路交通法の救護義務違反と報告義務違反という2個の罪名に触れることになります。
観念的競合の場合,成立した罪の中で最も重い刑により処断されます(刑法54条1項)。
イ 牽連犯(刑法54条1項後段)
犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる場合です。例えば、他人の住居に侵入して窃盗を行った場合、住居侵入罪(刑法130条前段)は窃盗罪(刑法235条)の手段であり,これらは牽連犯となります。
牽連犯の場合,成立した罪の中で最も重い刑により処断されます(刑法54条1項)。
ウ 併合罪(刑法45条)
- 確定裁判を経ていない2個以上の罪(刑法45条前段)
- 過去に禁錮以上の刑の確定裁判があった場合、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪(刑法45条後段)
このような場合,その2つ以上の罪は併合罪として処断されます。例えば,ある場所で盗みを行い,また別の場所でも盗みを行った場合などです。
併合罪の内の1個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科しません。ただし、没収は科すことができる(刑法46条1項)。
併合罪の内の1個の罪について無期懲役・無期禁錮に処するときも、他の刑を科しません。ただし、罰金、科料、没収は併科することができます(刑法46条2項)。
併合罪のうちの2個以上の罪について有期懲役・有期禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑について定めた刑期の上限にその2分の1を加えたものを長期とします(同法47条本文)。
例えば、強盗罪(法定刑は5年以上20年以下の懲役)と恐喝罪(法定刑は1月以上10年以下の懲役)が併合罪となるときは、重い強盗罪の刑の長期に1.5倍の加重をして、5年以上30年以下の懲役が処断刑となります。
ただし、加重の上限は30年(刑法14条2項)、また、それぞれの罪の刑の長期の合計を超えることはできません(刑法47条ただし書)。
併合罪の内の2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額(罰金額の上限)の合計以下で処断されます(刑法48条2項)。