控訴

~控訴とは~

控訴とは、地方裁判所又は簡易裁判所が第一審として宣告した判決に対して不服がある場合に、高等裁判所の裁判を求めて訴えることです(刑事訴訟法372条)。

 

~控訴審とはどんな裁判なのか~

第一審の判決に不服があると言っても、控訴審では、第一審判決を白紙に戻して最初から裁判し直すわけではありません。

控訴審は、第一審判決が妥当かどうかの見直しをする裁判です。第一審判決が宣告された時を基準に、その時に表れた資料や証拠に基づいて、第一審判決での事実認定の合理性や、訴訟手続の適法性、法令解釈ないし適用の当否を検討していきます。

従って、控訴審では、第一審で主張しなかったような新しい事実の主張や新しい証拠の提出は原則としてできません。控訴審があるからといって、第一審で主張・立証を怠るようなことのないように注意が必要です。

 

~控訴の理由~

控訴審は第一審判決の見直しです。そして、どんな理由があれば判決の見直しを求められるかは、法律が定めています。

 

1 絶対的控訴理由

次のような事由があれば、判決に影響を及ぼすかどうかを問わず控訴できます。このような事由があれば、判決に影響を及ぼす蓋然性が高いからです。

  1. 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと(刑事訴訟法377条1号)
  2. 判決に関与することのできない裁判官が判決に関与したこと(刑事訴訟法377条2号)
  3. 審判の公開に関する規定に違反したこと(刑事訴訟法377条3号)
  4. 不法に管轄又は管轄違いを認めたこと(刑事訴訟法378条1号)
  5. 不法に公訴を受理し又はこれを棄却したこと(刑事訴訟法378条2号)
  6. 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと(刑事訴訟法378条3号)
  7. 判決に理由を付せず、又は理由にくいちがいがあること(刑事訴訟法378条4号)

 

 2 相対的控訴理由

次のような事由がある場合、判決に影響を及ぼすことが明らかであれば、控訴できます。
 

  1. 訴訟手続の法令違反(刑事訴訟法379条)
  2. 法令適用の誤り(刑事訴訟法380条)
  3. 量刑不当(刑事訴訟法381条)
  4. 事実誤認(刑事訴訟法382条)

3 その他

第一審判決の見直しとはいえませんが、判決の妥当性確保及び被告人の救済という観点から、例外的に、次のような事由があれば控訴できます。

  1. 再審請求できる事由があること(刑事訴訟法383条1号)
  2. 第一審判決後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があったこと(刑事訴訟法383条2号)

 

~控訴審の手続の流れ~

1 誰が控訴できるのか

(1)被告人(刑事訴訟法351条1項)

(2)被告人の法定代理人又は保佐人(刑事訴訟法353条)

(3)第一審の代理人又は弁護人(刑事訴訟法355条)

なお、これらの者が控訴するには、それをする利益が必要です。第一審で無罪を主張していたところ、公訴棄却や免訴の裁判がされたときは、被告人は無罪を主張して控訴をすることはできません。公訴棄却や免訴によって有罪になることは免れたのだから、更に無罪を求める利益はないとされるからです。

また、被告人の法定代理人又は保佐人及び第一審の代理人又は弁護人は、被告人の明示した意思に反して控訴することはできません(刑事訴訟法356条)。   

(4)検察官(刑事訴訟法351条1項)
検察官が控訴するときは、より重い処分を求めてのことがほとんどですが、被告人の無罪やより軽い刑を求めて控訴することも稀にあります。

 

2 控訴提起の期限

控訴は、判決が宣告された次の日から14日以内に提起しなければなりません(刑事訴訟法373条)。

 

3 控訴提起の申立て

控訴の提起は、控訴申立書を第一審裁判所に提出して行います(刑事訴訟法374条)。提出先は控訴裁判所である高等裁判所ではありません。

 

4 弁護人の選任

第一審の弁護人は控訴の申立はできますが、控訴審での弁護人は、改めて選任しなければなりません(刑事訴訟法32条2項)。

 

5 控訴趣意書の提出

控訴申立書を提出すると、控訴裁判所である高等裁判所から、一定の期間内に控訴趣意書という書面を提出するように通知されます。その期間内に、控訴趣意書をその高等裁判所に提出します。控訴申立書と違い、提出先は控訴裁判所である高等裁判所です。

控訴趣意書には、「控訴の理由」で述べた理由のどれに基づいて控訴するのか、その控訴理由がどのような根拠で認められると言えるのかなどを記載します(刑事訴訟法376条2項)。

控訴理由が認められる根拠として記載できる事実や証拠は、原則として、第一審の訴訟記録やそこで取り調べられた証拠に表れた事実に限られます。

例外として、量刑不当や事実誤認を理由とする場合は、やむを得ない理由で第一審の弁論終結前に取調べ請求できなかった証拠に基づく事実や、第一審の弁論終結後に生じた事実は、控訴理由が存在する根拠として控訴趣意書に記載することができます(刑事訴訟法382条の2第1項,2項)。

 

6 審理

控訴審では、控訴趣意書に記載された控訴理由が認められるかどうかが審理されます。

控訴審での主張は、控訴趣意書に基づいて行わなければなりません。そのためには、高度な法的知識が必要です。なので、弁護士である弁護人でなければ控訴審で弁論することはできません(刑事訴訟法388条)。そのため、控訴審では、被告人に出頭義務はありません(刑事訴訟法390条)。

控訴審は、第一審判決の当否を審査するものなので、原則として、新たな証拠調べはしませんが、控訴趣意書に記載した量刑不当や事実誤認に関する事実は取り調べられます(刑事訴訟法393条1項)。

また、第一審判決後の事情でも、量刑に影響を及ぼすようなものは,裁判所が職権で取り調べることがあります(刑事訴訟法393条2項)。被害者との間で示談が成立したことを示す証拠や、第一審終結後に医療施設に通って薬物事犯の再犯防止に取り組んだこと証拠などがこれに当たります。

 

7 判決

控訴審では、ほとんどの場合、第2回公判期日が判決期日となります。審理を終えた1、2週間後の日に指定されることが多いようです。

(1)控訴審の裁判の種類

ア 破棄差戻し(刑事訴訟法397条、刑事訴訟法400条本文)

第一審判決を破棄し,事件を第一審裁判所等に差し戻して再度審理させる判決です。

イ 破棄自判(刑事訴訟法397条、刑事訴訟法400条但書)

第一審判決を破棄し,控訴審裁判所が自ら事件に対する判決を言い渡す判決です。

ウ 控訴棄却(刑事訴訟法396条)

第一審の判決がそのまま維持される判決です。

(2)未決勾留日数の算入の特例

控訴の申立て後に勾留されて身柄拘束された日数は、次の場合には、懲役や禁錮刑を受けた日数として数えられます。その分、実際に刑務所で服役する日数が減ることになります。

ア 検察官が公訴提起した場合(刑事訴訟法495条2項1号)

イ 元の有罪判決が破棄された場合(刑事訴訟法495条2項2号)
元の有罪判決をある理由で破棄したが、控訴審が自判して第一審と同じ刑を言い渡した場合も、元の有罪判決が破棄された場合に当たります。

(3)不利益変更禁止の原則

検察官が重い刑を求めて控訴しない限り、第一審で言い渡された刑よりも重い刑になることはありません(刑事訴訟法402条)。

検察官が特に重い刑を求めていないのに原判決より刑が重くなってしまうとなると、被告人がそれを恐れて、控訴を躊躇することになってしまうからです。

 

~控訴審の実態~

平成26年度の司法統計年報によると、控訴が申立てられた割合は約7%です。その内、控訴審で第一審判決が破棄された割合は約9%です。

破棄事例としては、第一審後に示談等が成立した場合、過去の量刑傾向に比して明らかに量刑が重い等があります。

第一審の判決で執行猶予がつかず実刑判決になってしまった、刑が重すぎる、事実認定に誤りがある等の不服があって控訴を検討されている方は、刑事事件の控訴審を多数経験している弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に是非ご相談ください。控訴審における刑罰の見通しと控訴審の公判に向けた準備や対応方法をアドバイスいたします。

 

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