相手が死亡した場合の示談交渉②
仕事中、加害者の不注意により被害者が死亡してしまったという場合に問題となる罪と、示談交渉について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
奈良県橿原市在住のAは、橿原市内の会社に勤める会社員です。
Aは仕事で荷物を運ぶ仕事をしていたところ、Aは一度に大量の荷物を運んでしまい、前が見えない状況で歩いていました。
その際、通行人Vの方にAが接触してしまい、バランスを崩したVは階段から転落してしまい、頭部を強く打ち、数時間後に死亡してしまいました。
救急隊員の通報を受けて駆け付けた橿原市を管轄する橿原警察署の警察官は、Aに対する捜査を在宅で開始しました。
Aやその家族は、示談交渉をしたいと考えましたがどうすれば良いか分からず、弁護士に無料相談をしました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【被害者が死亡した場合の罪】
≪前回のブログを御参照ください。≫
【Aはどのような罪に?】
ケースのAについては、故意に相手を転倒させ死亡させたわけではないので、故意犯処罰の原則に基づき殺人罪などの適用は認められません。
しかし、自ら前が見えなくなるほどの荷物を持つなどした不注意により、過失は認められると考えられます。
Aの場合は仕事中での事故です。
もしAが「仕事」として、「反復、継続して」この仕事を続けていた場合、業務上過失致死罪が適用される可能性があります。
業務上過失致死罪は、「社会生活上の地位に基づき反復、継続して行う行為であり、他人の生命・身体等に危害を加える恐れがあるものをいう」とされていて、そのような者が事故を起こした場合には、過失致死罪に比べて厳しい刑事処罰が科せられる可能性があります。
【示談交渉について】
示談交渉は、弁護士に限らず当事者同士で行うことができる民事上の合意です。
その示談交渉を、あえて刑事事件専門の弁護士に依頼する意味について、以下で検討します。
・被害者との接触が容易ではない
被疑者、すなわち加害者が被害者の連絡先を取得することが容易ではないという場合が考えられます。
例えば、人身事故などの場合は事故発生直後に連絡先を任意で交換するなどして接触することができることもありますが、ケースのように被害者が死亡してしまった場合や性犯罪などの場合には、連絡先を取得できず被害者との接触すら難しいという場合も少なくありません。
その理由は、被害者の処罰感情が強かったり、連絡先を教えることでの報復が怖かったりと様々です。
弁護士は、捜査機関(主として検察官)を通じて被害者に対して「弁護士限り」で連絡先の開示を依頼し、加害者側の心情や示談の意向などを丁寧に説明したうえで、示談交渉を進めていきます。
弊所でご依頼いただいた事件の中には、最初は自分で示談をしようとしたが連絡先を開示していただけなかった、接触を試みたがかたくなに拒絶されたが、弁護士が入って粘り強い交渉を行うことで態度が軟化し示談に至ったという事例も少なくありません。
・示談書類の作成が容易ではない
そもそも示談書には決まったフォーマットがあるわけではありません。
刑事事件の場合、被害者に寄り添い被害者の心配や懸念事項を払拭するための約定を書面に落とし込む必要があります。
これが、刑事事件の示談交渉の経験がある弁護士に依頼をした方が良いと言える理由の一つです。
・示談金のやり取りについての経験がない
インターネット上では示談金の相場という言葉が多く書かれているようです。
しかし、示談交渉というのは加害者側と被害者側、双方の合意によって行われるものであり、相場どおりの金額を支払えばよい、というわけではありません。
ともすれば低い金額での示談締結により検察官や裁判官の心証に影響を与えたり、法外ともいえるほどの高い示談金を請求されたりする可能性も否定できません。
よって、示談交渉の経験が豊富であれば、経験則に基づいた金額の提示等ができるでしょう。
奈良県橿原市にて、仕事中、不注意な行動により被害者を死亡させてしまい、示談交渉について知りたいという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に御相談ください。